アテネに住む姉弟がまだ見ぬ父親を探しにドイツへと旅をする姿を描いたテオ・アンゲロプロス監督作品。
物語は、主人公の姉弟の視点で一貫して描かれる。
姉弟がゆく先の景色は必ず霧に覆われたものであり、二人の心象風景として常に画面全体を支配している。
その彩度の低い画面とロングショットの画角により、ときに絵画と見紛う場面もいくつかあった。
僕が特に印象に残ったのは、街に雪が降ることによって時間が止まったような空間へと変わるあの場面。
そんななか、姉弟だけは雪のなかを駆ける。
被写体となる姉弟以外の人物をまるでモノとして扱ったような、絵のなかの被写体だけが額のなかを動き回るような感動的な場面だった。