櫻イミト

ニーベルンゲン/クリームヒルトの復讐の櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.0
淀川長治のオールタイムベスト10の1本。13世紀にドイツで書かれた国民的英雄譚「ニーベルンゲンの歌」(日本で例えればヤマトタケルの物語のようなもの)を二部作で映画化。

後半となる本作は、亡きジークフリードの妻クリームヒルトの復讐譚。クリームヒルトは前半の”世間知らずのお姫様”とは打って変わり、始終、怨念に満ちたオーラを発していて、その存在感が映画を引っ張っていく。暗黒面に堕ちたアンチ・ヒロインの誕生と言える。映像も前半のファンタジックな明るさは影を潜め、怒りと悲しみが渦巻く戦いの業火が闇の中で燃え盛る。フン族の様子は兵隊アリの様だ。「スターウオーズ」がオペラ「ニーベルンゲンの指輪」を下敷きにしているのは有名だが、本作で描かれた肉親の因果話や神話的なキャラクターなど、その世界観が「スターウォーズ」新三部作に大きな影響を及ぼしているのは間違いないだろう。

「ニーベルンゲン」2部作は、グリフィス監督「嵐の孤児」(1921)と並ぶ、マイ・ベスト・サイレント映画になった。
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