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アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵のtakのレビュー・感想・評価

3.4
アガサ・クリスティの「おしどり探偵トミー&タペンス」シリーズの「親指のうずき」。舞台をフランスに翻案した映画化作品。好奇心の塊で疑問に向かって突っ走る妻プリュダンスと、騒動に巻き込まれる夫ベリゼール。ベリぜールの叔母が暮らす施設で、突然親族を名乗る人々に引き取られた老婆。彼女の不可解な言葉と、どこかで観たことのある屋敷の絵が心に引っかかっり、老婆の身に危険が迫っているのでは?と考えたプリュダンス。絵の風景を手がかりにその謎を解き明かす物語。

マクベスの魔女と同じなの。"この親指がうずく。邪悪なものが近づいている。"

この言葉と共にプリュダンスの好奇心がうずき始める。米澤穂信の「氷菓」でヒロインが言う「私、気になります!」を重ねてしまうw。嗜好に偏りがあってすみませんw。

前半は、カトリーヌ・フロとアンドレ・デュソリエの皮肉まじりの会話が楽しくてメモしたくなる。言葉を丁寧に扱ってくれる映画って、やっぱり好みだ。映画用の台詞もあるのだろうが、クリスティの原作では、マクベスの引用を筆頭に気の利いた言葉が選ばれてるんだろうな。未読なので興味がわいた。

面と向かってのお世辞は女をダメにするわ。
あの人の歯嫌い。赤ずきんの狼みたい。
灰色の脳細胞が燃えてるわ。
彼女の興味は処罰されぬ犯罪です。
今日は捻挫でもして寝ててくれ。

いい台詞がいっぱい。

カトリーヌ・フロとアンドレ・デュソリエのコンビが、突っ走る妻と巻き込まれる夫のいいバランス。ウディ・アレンの「マンハッタン殺人ミステリー」が好きな人は向いてるかも。久々に見たジュヌビエーブ・ビジョルド。地味な脇役だが「私生活のない女」のヴァレリー・カプリスキーが出演。

ユーモラスな描写にクスクス笑えて、仲睦まじい熟年夫婦のやりとりと牧歌的な風景にほっこり。車種がわかんないけど、夫妻が乗る黒いオープンカーがこれまた好み。前半のオシャレな雰囲気、後半のスリリングな展開。最初の思い込みが思わぬ展開に。

ポワロ映画の重厚感とは違うけれど、気軽に楽しめる好編。
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