ペドロ・コスタはすごいなあ。
長回しのワンカットに見入っていると、時々自分がなにを見ているのかわからなくなってくる。けれど、面白い。
まるで詩のような手紙の内容がリフレインされ、スラム街の片隅で人々が何気ない会話を繰り返している。絵画ように陰影の濃い絵作りのなかで、時間が澱んでいって、スラム街の暮らしが油絵で描かれているような気がしてくる。
完璧なドキュメンタリーでもなく、ドラマでもない。入り込めなかった人たちは、映画館の暗闇で、寝息を立て始めるのだが、たぶん、目覚めても、自分がポルトガルのスラム街に住んでいるという、悪夢が続いているような気持ちになるんじゃないだろうか。