春井

スケアクロウの春井のネタバレレビュー・内容・結末

スケアクロウ(1973年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

人に、好きそう、と勧められて見た。まんまと好きだった。

どうやらわたしは、全体のストーリー展開とかよりも、映像の雰囲気とか、世界観とか、ちょっとした小道具とか、なんの気ないセリフとか、映画のそういったパーツみたいなところが気に入ると「好きな映画!」と思うのかもな。と今回これをみて思いました。

まずとにかく、アルパチーノのみずみずしさったらない。マフィアのイメージばっかあったけど、好青年のアルパチーノこんなに愛らしいの? 男か女かわからないから電気スタンドをチョイスするセンスも、なんか前の部分にスリットが入ったニット帽も、いちいちおどけてみせるところも、全部かわいかったな。

ヤワな箱に派手なリボンつけたラッピングのプレゼントを道中大事に抱えてるの、あれめちゃくちゃ愛だなって思った。あとあのサンドバッグみたいな荷物入れかっちょいーな。マックスが持ってた旅行カバンも渋くてイケてる。

マックスのキャラもよかったー。つかケンカっぱやすぎるだろ。最初の朝ごはんとこで、誰のことも信じないって大見得切ってたマックスが、最後に目をさまさないフランシスに「お前しか信じられない!」みたいなこと言ってたの胸熱よ。お得意の厚着を、ストリップに見立てて脱いでケンカを回避するシーンもよかったなー。あそこでジュークボックスの音楽かけるの気が利いてるよ、やっぱわたしもジュークボックス買うしかないか。
フランシスの表情が曇ってたのが印象的。

フランシスが「どうして俺を相棒に選んだ?」と尋ねたときの、マックスの「最後のマッチをくれたしな」「おれを笑わせた」ってセリフもめちゃくちゃに格好良い。ここシビれました。なんかよくわかんないけど「男!」って感じする。昨今、男や女や言うとよくない風潮ありますが、これはまさしく「男!」ですし、「男!」としか言い表せません。語彙がないだけとも言う。

マックスの妹に会うまでの道中、二人で野外で煮炊きしたり、ヒッピー?の車でヒッチハイクしたり、インディアンとコミュニケーションとれなかったり、お金を稼ごうとバイトして即ケンカになって放り出されたり、ああいう演出たまんないよな。大好きだ。あの早送り感ある映像だけ永遠にみてたいよ。

フランシスが家の近くまできたらどんどん表情が強張っていくの、すごくはっきり伝わってきた。床屋に行ったり、教会で祈ってみたり、そわそわ、できる限りやろとしてるところ、健気。

家に電話かける時に、どうにか鼓舞したいマックスが「お前だって立派な人間だ」「送金だってした」「償おうと戻ってきた」って何度もしゃべりに来て、あげくフランシスが「(電話を)かけさせてくれ」って言うシーンも、ちょっと笑えるけどなんか泣けたよ。なんでかな。奥さんに「バナナキング夫人か」って冗談を言ってみたのにこれっぽっちも笑える展開にならなかったところ、結局あんなに「笑わせて」きたフランシスが本当に大切な場面で一切笑えなくなるの、ベタな展開だけど胸が詰まったね。そのあと、「男の子だった!」と喜びを爆発させて電話ボックスを出て、でもあの何より大切に抱えてきたぼろぼろになったプレゼントは置き去りにしていくの、切ない。
でも奥さんの気持ちわかるよ、しかも飛び出していった旦那を3年は待ってたんだよ、だけど嘘はだめだよ……。

最後、マックスが靴底のお金を無理やり取り出してまで往復切符を買ったのは、(片道にしなかったのは)、ピッツバーグでお金だけ引き出してまたフランシスに会うぞってことだよね。

なんでこんな長々書いてんのかしらね。
いつも映画見終わった後の10分くらいで書くってなんとなく決めてるけど、今日はやたらだらだら書いてしまいました。
やっぱロードムービー好きだなー。よい映画でした。
春井

春井