バナバナ

小さな村の小さなダンサーのバナバナのレビュー・感想・評価

小さな村の小さなダンサー(2009年製作の映画)
5.0
まだ文化大革命時代、江青女子の発案で、革命をバレエで表現させようと北京舞踏学校のテコ入れが始まる。
物凄い山奥に住んでいたリーの学校にも、入学テストを受けられる様な子供がいないか、スカウトの人がやってくるのだが、この人達、運動している姿を見ないのね。
教室に座っているだけで「この中には居ない」と帰りかけたところを、担任の若い先生の押しで、リーが青島にテストを受けに行くことになる。

リーは学校で一番運動神経が良い子だったから、学校の先生も推薦してくれたのだろうな。
入団テストでは体が柔らかかったリーも、舞踏団に入ってからは筋力が無くて落ちこぼれだったのだが、励ましてくれる先生も居て、努力の結果、いつのまにか公演で主役をやるまでに成長する。
…が、江青の鶴の一声
「この作品には革命が入ってない。銃はどこなの?」で、
それっぽいガッチガチの演出に変わり、芸術重視の先生が飛ばされてしまうところが『嗚呼、文化革命中!』という感じだった。

毛沢東が死に、四人組が逮捕されて、ようやく中国もやや雪解けムードになってきた折り、リーはアメリカのバレエ団に研究生として入団できることになる。
それが1981年のことで、アメリカに居る中国の総領事も、まだ人民服を着ている。
大統領の悪口を言って逮捕されないの?と、リーがカルチャーショックを受けるのも、ごもっとも。

そんな彼もアメリカで恋をし、帰国の時期が近付いてくると、「亡命したい訳じゃないが、今の中国には帰りたくない」となるのも、至極当然な話だ。

私が感心したのは、こういう時、人権専門の弁護士が出てきて、州判事どころか国務省、副大統領まで動かすところ。
リーが居たアメリカのバレエ団の理事に、たまたま当時のブッシュ副大統領夫人がいたのも幸いしたのだろうけど、日本人が北朝鮮に拉致された事件だって、当時、国がこれ位迅速に動いてくれていたら、未だ未解決なんて事態にはなっていなかったかも。
こういうアメリカの行動力ってすごいよなと、いつも感心します。

例え、国の方から「そんな奴は二度と戻ってくるな!」と切られたとしても、同胞が外国で活躍している姿は気持ちいいものだよね。
新しい総領事も、粋な計らいするじゃないのさ!

この作品で、主役のリー・ツンシン役を演じた人は、リーが北京舞踏団で指導を受けていた先生の息子さんなんですって。
つまり後輩でもあり、今はバーミンガムのバレエ団で活躍されている現役の中国人ダンサーなのだそうです。すごい因縁ですね。

こういうのが、撮られるべくして撮られた作品、なんでしょうね。
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