バナバナ

流浪の月のバナバナのネタバレレビュー・内容・結末

流浪の月(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ファミレスでウエイトレスをしている更紗は、一流企業に勤めて顔もイケメンの亮と同棲していて、結婚も意識している。
ある日、更紗が同僚と飲み会の帰りに喫茶店に入ると、そこは子供の頃自分を誘拐した犯人、佐伯文の店だった。
すぐ文に気付いた更紗だったが、それ以降、仕事帰りに文の喫茶店に通う更紗なのだった…。

映画の中で説明が無かった?部分をウィキペディアから補足すると、
更紗が当時大学1年生だった文の家に転がり込んだのは、父を病で亡くした後、母に捨てられ母方の伯母の家に引き取られたが、従兄からイタズラを受けていたので家に帰りたくなかったから。

更紗と同棲している亮は、更紗の仕事のシフトを把握したがったり、更紗が文の喫茶店に通いだして帰りが遅くなると、更紗にDVを振るうようになる。
亮の従妹によると、どうやら亮が小さい頃に母親が家を出て行ったらしく、自分が捨てられるのが怖くて前の彼女もDVで束縛していたらしい。
横浜流星が本作では凄く嫌な野郎で、一皮むけた感じだった。

文役の松阪桃李は、19歳の初出のシーンから顔も凄く痩せていて、無表情で驚いた。
ラスト近くで全裸になるのだが、肋骨剥き出しでガリガリに痩せていたので、この作品のためにかなりダイエットしたのだろうと思われる。

文は劇中ロリコンと言われているけれど、更紗を家に連れて行ったのは、幼児性愛者だからという訳ではない。
人間のありのままを受け入れてくれる最初の場所は、ほとんどの人が家庭だと思うのだが、更紗も文も、家庭は自分を否定せずに守ってもらえる場所ではなかった。
文が自宅に更紗を入れたのは、更紗の気持ちが分かり、居場所の無い彼女を保護しただけだったのだろう。
こんな二人が、ありのままの自分をそのまま受け入れてくれる互いを必要とするのは、必然だと感じた。

本当なら警察も、婦人警官が被害者から調書を採る筈だから、誘拐には当たるけれど何も無かったのは分かると思うのだが、本作の中では、文は警察にも更紗に手を出したと思われ、刑が確定している。
もし劇中で、裁判で文が更紗に手を出していない事が証明されていたとしても、今はネットがあるので、この映画のように、事実を知らない人が自分の想像を勝手に垂れ流して、全く会ったこともない人間を追い詰めることは簡単にできてしまう。
一度烙印を押されてしまったら、それを拭うことは難しい…。
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