ちろる

駅馬車のちろるのレビュー・感想・評価

駅馬車(1939年製作の映画)
4.2
ヒューマンドラマとしてもロードムービーとしても西部劇アクションとしてもバランスよく上質な、ジョン・フォード✖️ジョン・ウェインの名作。

駅馬車に乗り、同じ目的地ローズ・バーグに向かうそれぞれ全く違う事情を抱えた人間たちを描くため、登場人物が多いが、秀逸なカメラワークにより、主要人物に感情移入しやすい。
身重の貴婦人ルーシーから始まるので彼女がメインで進むのかと思いきや、だんだんと頭角を表すのは娼婦のダラス。
彼女は住んでる町から爪弾きにされ、目的もなくただ駅馬車に乗り込みます。

それが運命の分かれ道。
馬車の中でもなんとなくダラスはみんなに距離を置かれ、話せるのは以前から仲の良い医師のブーンのみ。
食堂の席をわざと離されたり、水筒の水もコップには入れてもらえず、同乗の貴婦人ルーシーとはあからさまに差別されちゃいます。
しかしそんな時、途中で乗り込むお尋ね者のリンゴ・キッドがダラスの繊細さや優しさを見つめダラスは初めて丁寧な扱いを受けて、少ししあわせな未来を夢見るダラスの表情が美しい。
旅の途中に生まれたルーシーの赤ん坊をとても大切そうに可愛がる聖母のような姿には、街を追い出されて投げやりになるあの最初のシーンとは違って見える。
ちなみにそんな可憐に戸惑いながら恋をするダラスと共に見所なのは、描かれる怒涛のインディアンの襲撃シーン。
CGの全くないこの時代にスタントだけでこの迫力のアクションまで出来るとは流石ジョン・フォード作品。
特にリンゴが馬車の馬を次々と飛び移って行くのには、アクションシーンそんな興味ない私でも乗り出して観てしまうほど感動。
改めてスタントマンの凄さを思い知らされます。
アクションや、適度な緊張感を持続させながらも、ラストまで流石と唸らせるエンタメ性の高い脚本。
馬に石投げるというけしからん行為に、こんな感動するだなんて思わなかった。

相変わらず映画を観た!という満足感を与えてくれるジョン・フォード作品。
ようやく観られて良かったです。
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