nozomi

少年と自転車のnozomiのレビュー・感想・評価

少年と自転車(2011年製作の映画)
3.9

一時的に施設に預けられている11歳の少年シリル(トマ・ドレ)は、父親が迎えに来るのを待つが、音沙汰も無く電話も繋がらない。施設を抜け出して父と住んでいた家まで行くが、1ヶ月前に引っ越したことを管理人から告げられる。

同じ頃、ある出来事をきっかけに出会った女性サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)に、週末だけ里親になってもらうことになる。

「サンドラの週末」「ある子供」などの作品を手掛けた、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(ダルデンヌ兄弟)によるドラマ映画。

父親に捨てられたという事実を受け入れられず、周囲の人に反抗的な態度をとったり、自傷行為で自分を傷つけたりで、人を困らせてばかりいるシリル。

けれど人に嫌われることはとても恐いこと。それが親なら尚更。シリルは身勝手な子供なんかじゃなく、ただ愛情に飢えた純朴な少年。頼り方が分からず、自分で自分を傷つけてしまう様子が痛々しい。

そんな中で出会ったサマンサの深い愛が、シリルを変えていったように思えます。

それと、自転車の存在。

自転車とは、父親に会いに行った時も、悪いことをした後も、おつかいに行くときも、いつも一緒。

自転車は、確か自由の象徴ですよね。
シリルが自転車に乗っている時だけは楽しそうな表情をしているのが印象的でした。

ラストは緩やかな上り坂を自転車で登っていくシーンで終わりますが、シリルが力強く坂を登っていく所で終らせたのは、なかなか良いと思います。
nozomi

nozomi