あの暴君ぶり、刃先を握って眉根も動かさない不遜さに憧れてしまう。みんなそうだろう。ただ、我妻には家来がなければ臣民もいない、殴って制圧すべき周囲があるだけだ。ところが見渡せばクビにしようという署長はいる、殺し屋への備えもない。
「刑事手続」の初動を担う一刑事としての暴君で何一つ実現しないこの孤独な男がただひとり制することをためらったらしい妹、そのときにはもう兄を思い出しもしなくなった女を撃ってそのあと誰と向き直るつもりで現場を立ち去ろうとしたのか。誰に撃たれたとも知らずに、余計なお世話だばか野郎と思う余裕があったろうか。