緑

ツィゴイネルワイゼンの緑のレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
3.5
DVD鑑賞済み
原作未読

上映前に妻夫木聡+阪本順治+原田麻由+「俳優 原田芳雄」著者による
小一時間のトークショー。
まさか阪本と妻夫木聡で「ツィゴイネルワイゼン」リメイクか!? と
いい予感がせず構えて行ったが、
「ツィゴイネルワイゼン」とは関係なく
ただ原田芳雄を語るというテーマで安堵。

原田麻由が話していた、
「お父さん」ではなく「芳雄」と呼んでいたエピソードが衝撃的だった。
原田麻由が学生時代に所属していた演劇部では
本人がいないところではみんなが「芳雄」呼びだったとか。
なんでも、家に人の出入りが多く
みんなが「芳雄」と呼んでいたため子どもたちもそれに倣い、
修正されないまま育ったそうだ。
原田芳雄自身は「お父さん」と呼ばれないことで
父親の役割に縛られずずっと「芳雄」でいられたことに
肯定的だった模様。

さて本編について。

円盤で観ていたことを忘れていた状態で上映が始まり、
麿赤兒たちが出てきたところで過去に観ていたことを確信。
映像の力が半端なく強いので思い出せたが、
忘れていたのも納得で、ストーリーは意味がわからない。
シーンシーンではなんとなくわかった気になるのに、
通すとどうにもわからない。
夢か現か、「ジョーカー」以上にわからない。
最早検証する気になれないくらいにわからないし、
なんか超絶耽美な映像をいっぱい観られたわーと気が済んでしまう。

映像はほぼ完璧!
妥協なく鈴木清順の美意識を具現化していると思われる。
室内も室外も、人物の位置や動き、調度品の選び方や配置、
陰影に至るまで何から何まで素晴らしいとしか言いようがない。
故に、室内で読書する藤田を外から撮っているシーンで、
窓ガラスによって藤田の顔が歪んでいたことが気になった。
これだけ徹底した画作りをしているからには
何かしら意味があるのだろうがよくわからない。

大谷の腕を撫でる原田の手の動きと
その腕を通している着物の袖を下ろす
大谷の手の動きのシンクロっぷりには感動すらした。
大谷直子はどちらの役でもかわいかった。
この人は正面の印象以上に横顔が綺麗だと思った。

大楠が着ていた着物はみんな好き。
大谷のもよかった。
原田の外套姿も恰好よかったし、
……藤田のコートの肩幅は時代感あり。

藤田の家に原田のものを返してと言いに来るようになってから
大谷の足先が映されなくなったのは、
生死を曖昧にするためだったのだろうか。

藤田が自宅で観音開きのドアに向かって歩くシーンで
一瞬途切れたのも気になったが、
これはフィルムの劣化のせいかもしれない。
緑