緑

ヤジと民主主義 劇場拡大版の緑のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

北海道で安倍晋三を乗せた自民党街宣車に
ヤジを飛ばして警察に排除された
大杉氏と桃井氏を中心とした
ドキュメンタリー。

ひとりでヤジを飛ばす大杉氏と、
大杉氏の行動に勇気をもらって
ヤジを始めた桃井氏に感服。
特に桃井氏は当時大学生で、
就職大丈夫か? と不安になったが、
労組に就職して一安心。

桃井氏排除の現場にたまたま居合わせた
おばちゃんにも取材していて、
おばちゃんが桃井氏を心配する視点で
桃井氏と警察とのやり取りの場から
離れずにいたことと、
何もしなかったことを
「反省してます」という言葉に涙。
自分も声は出せないかもしれない。
でももしおばちゃん同様に
こういう場に立ち会うことがあったなら、
せめて弱者側の手助けをしたい。

桃井氏が排除される姿を撮った動画が
桃井氏に否定的なタイトルで
YouTubeに複数本上げられていて、
警察批判のタイトルでも
成立する動画なんだよなぁ。

現場の警察官たちは、
恐らく「上」に従った仕事を
しただけなのだろう。
それならアイヒマンと何も違わない。
自分の頭で考えた行動だとしたら、
その考えは保身でしかなく、
己が権力側にいることに胡座をかいた
恥知らずどもである。

本作の笑いどころは、
警察側が証拠として裁判所に提出した
ヤフコメのプリントアウトと、
非常に恣意的な再現動画。
排除の実例としての象大暴れも
不謹慎だけど比較対象としての振り幅に
おかしみを感じた。

識者に多く取材していることに
好感を持てたけど、
警察側の正当性を認める識者は
いなかったのだろうか。
いなかったらいなかったで、
そういうナレーションがあったほうが
「中立」へのユーモアとなった気がする。

治安維持法の被害者の言葉は
過去の出来事なんかではなく、
これから起こりうる出来事と
誰もが認識すべきことは論を俟たない。

地裁(広瀬裁判長)はいい仕事をした。
高裁(大竹裁判長)はクソ仕事をした。
最高裁判決後に
本作の完成版が作られそう。

トークショーは監督とプチ鹿島。
プチ鹿島が披露した、
安倍晋三は第二次政権前に
「実話ナックルズ」のような雑誌にまで
批判記事のクレームを入れていたという話に、
共感性羞恥を煽られた。
緑