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ツィゴイネルワイゼンのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
3.8
鈴木清順監督が、内田百間の「サラサーテの盤」などいくつかの短編小説をもとにして作った、幻想と現実、生と死が交錯する妖艶な現代の怪談。
「陽炎座」「夢二」へと続く「(大正)浪漫三部作」の第1作で、2組の夫婦の奇妙な関係を、幻想的な映像と色彩でつづる。( 1980)

陸軍士官学校ドイツ語教授の青地(藤田敏八)は、旅先でトラブルを起こした友人のさすらい人・中砂/なかさご(原田芳雄)を貰いさげし、二人は宿で、弟の弔い帰りの芸者・小稲/こいね(大谷直子)と出会い、盲目の旅芸人3人の関係の噂話などをする。
その後、青地が、結婚したという中砂を訪れると、妻の園/その(大谷直子二役)は小稲と瓜二つだった。
やがて、中砂夫妻の間には娘の豊子が生まれるが、園は中砂が持ち込んだスペイン風邪で亡くなる。
しばらくして、青地が中砂を訪ねると、豊子の乳母として現れたのは小稲であった。
中砂は青地に、死んだ後のお互いの"骨"についてある提案をするが、やがて旅先で事故死する。
その5年後、小稲は幼児になった豊子を連れて青地家をたびたび訪れ、中砂が青地に貸したままの本や「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを返してくれるよう求める…。

「キツネの穴に落ち込んでしまったのだから、もう後戻りはできませんよねえ」

「あなた、私の骨が好きなんでしよ。…分かるわよ。骨をしゃぶるような抱き方だもの」

「何でも腐りかけが一番旨いのさ」

「取り換えっこしようか」

「水蜜桃…腐ってはいませんのよ。腐りかけて実が全部蜜になってるの」

「おじさんこそ、生きてるって勘違いしてるんだわ。おじさんのお舟を頂戴。さあ、参りましょう」

奔放な原田芳雄、二役に挑んだ大谷直子、艶っぽい大楠道代(青地の妻)、戸惑い翻弄される藤田敏八…夫婦を演じる4人が個性的な役柄を演じる。

死体の股の間から這い出した赤い蟹、女の白い肌に浮かぶ紅い斑点、水蜜桃を舐める、目のゴミを舐めとるシーン…

どこまでが現実で、どこからがあの世の世界なのかほとんど判別できない幽玄でエロチックな鈴木清順の美学をご堪能ください。
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