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捜査官Xのmatchypotterのレビュー・感想・評価

捜査官X(2011年製作の映画)
3.7
ドニーイェン率、しっかり保つ。
そこに新しい風、金城武。彼、久し振りに観た。
なんかよくわからないけど彼はあっちの言葉を話してる方がなんでか様になる。

舞台は1910年代の中国雲南省の片田舎の小さな村。ドニーイェンが、紙職人として家族と仲睦まじく暮らしいている。

そこにたまたま通りかかった盗賊2人。
両替商を襲って強盗を働いてるところにたまたま居合わせた“ただの紙職人”のドニーイェンが割って入り揉み合いに。
そして、“プロの強盗2人”とのへし合いの末に“ただの紙職人”がその2人を撃退する。撃退どころか殺害。

そこに事件性を見た当局が遣わせた捜査官、それが金城武。
彼も過去に悔いを残す捜査官で、体にイチモツ遺してるが、頭脳は明晰。

このへし合いが単なる偶然の一般市民が強盗に対して正当防衛的な殺害、ではないことを見抜き始める。

となると、果たしてこの“紙職人”ドニーイェンは一体誰で、何者で、何でこんな芸当ができる達人なのか、、、そのわざわざ開けなくても良かったパンドラの箱を開け、寝た子を起こしてしまう、そんな映画。

ドニーイェン、、、ドニーイェンだぞ。
彼が平々凡々の“ただの紙職人”なワケがなかろう。
案の定、彼は何かを隠していて、そのままそれを隠し2度と蘇らないようにイチからやり直すためにもこの村に。
その過去が再び掘り返されることになり、とんでもない話に転じていく。

という、役所にぴったりのドニーイェン。
初めからその事件で映画にはならないだろうと思ってたがその予想に違わぬ展開。

それがバレることをわかっているかのように頭脳明晰捜査官の金城武がサクサクと現場検証から現場の様相を言い当てていく展開。
金田一耕助、名探偵コナンなど、名だたる推理探偵並みに話が早い。

これでは、こんなサクサク事件が解決してしまっては映画1本分の尺にならないではないか、と思ったら。

ドニーイェンの“ルーツ”、ここがめちゃくちゃ根深い。前半の話がゆっくりと本筋を紐解く形でメインの話が遅れてやってくる。

金城武が冒頭の方に“三大悪党”みたいな話をチラッとするが、その時点では何でそんな話を持ち出すのかと思ってたら、この中盤からの話の布石だった。

前半のテンポの良い軽快な推理サスペンスから中盤を経ての後半の重みのあるドニーイェンの過去と現在の葛藤と苦悩との決別の物語へ。

物語の“ラスボス”がまさかそことは。
そして、この“ラスボス”、圧倒的すぎる。
が、ドニーイェンにとっては相手に不足なし。

人間のこめかみには脳と心臓につながる“迷走神経”があるらしい。
その神経を拳一突きで断ち切ると、人は死ぬか、2度と意識は戻らない、らしい。
ツボ的な気功術というのか、中国武術、恐るべし。

後半はもはや武術力はない金城武に出番なしのレベルかと思いきや、それなりにちゃんと見せ場もある。

当初は捕まえる側と疑われる側だったが、なんやかんやと調べが進み真相に迫ることで2人だけに生まれる理解の境地。
かと言って、だったら仕方ない無罪です、と許せる問題でもない事実との対峙。

軽快な推理サスペンスと哀愁漂う人間模様と、壮絶で過去からの因縁、人の業、因果。
そして、ドニーイェンのアクションもしっかり魅せる。

思いのほか色々幾重にも折り重なった骨太な映画だった。


F:2008
M:2067
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