にく

ロビン・フッドのにくのレビュー・感想・評価

ロビン・フッド(2010年製作の映画)
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R・スコット『ロビン・フッド』。十字軍から脱走したサクソン人傭兵ロビン・ロングストライド。ノッティンガムへと辿り着いた彼は、死んだ領主の息子の身代わりとして騎士身分を詐称、英王と対立しつつも王軍の先頭に立ち仏軍を撃退する。って、おい、お前フッドじゃないじゃん。タイトルに偽りあり。
鎖帷子を纏った史上最も鈍重なロビン・「フッド」は、終始渋面を崩さない。いや、鈍重で憂鬱なロビンは以前にもいた。『ロビンとマリアン』のロビンだ。だがあれは、禿頭のS・コネリー扮するかつてのヒーローが、悪政に立向う為に重い腰を上げるという、『許されざる者』の先駆の様な映画だったのだ。
D・フェアバンクス(『ロビン・フッド』)やE・フリン(『ロビンフッドの冒険』)が扮した往年のロビンは大口で笑った。彼らはシャーウッドの森という「埒外」の地を活動の基盤としていたからこそフッド(頭巾)を被り(つまり身軽で)、驚異的な身体能力を発揮し、道化的な価値転倒の力を持ち得た。46歳の「中年」男ラッセル=ロビンは、フリンの様に颯爽と頭巾を被って現れるでもなく、かといって、当時やはり46歳だったコネリーの様に潔く「老境」を受け容れるでもない。頼みの獅子心王を早々に喪う寄る辺なき「ヒーロー」が最後に辿り着くシャーウッドの森とは、遂にユートピアの謂いである。
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