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推手のtheocatsのレビュー・感想・評価

推手(1991年製作の映画)
2.0
アメリカを舞台とした見事なまでの中華映画

本国流を頑なに貫く老いた中華人が止む無くアメリカに馴染み始めるまでを描いた物語。

米国白人を妻とする中国人息子が中国から父親を良かれと思って呼び寄せたが妻と父との関係は最悪。双方共に言葉が理解できず歩み寄りをしようともしない。

我流を貫き室内で太極拳を日課としテレビを大音響で見る父親と、ホームワークで執筆をする妻では行動面でも全く折り合えず、特に米国人妻にとっては耐え難い日々。この場面はこちらとしても妻側に同情を多くせざるをえない。
しかし、隠居父としてみれば家族である妻のいるところで何かをしたかったのかもしれないし、文化面をよくよく考慮しないと行動心理面をどうこう判断できない問題とも思う。

いよいよ妻のストレスが高じ胃から出血し入院! 退院後もぎくしゃくは続き、父親が散歩に出て迷子になったことから息子が大荒れ。妻手料理をまさかのちゃぶ台返ししてしまう!!
この場面には中国人もそんなことするんだとかなり驚きましたね笑。ただ、ここにおいても奥さんにまたの同情。あれほど黙って耐え忍ぶ白人女性というのも珍しいかも、というより監督が実はアメリカ女性を理解していなかった可能性も考えられるがどうなんだろ?

長くなりすぎるので中国人老婦人とのエピソードは省略。

アメリカを舞台とした中国映画の総評は2.5というところだが三ツ星には繰り上げできない二つ星。


付記:日本人なら英語を覚えコミュニケーションをとろうとするだろうし、執筆家である妻の邪魔をしないように気を遣うだろうと思えてならなず、中国人父の頑なさと無神経さは全く理解しづらいところ。
しかし逆にああいった「鷹揚な気高き頑固さ」こそ中華的メンタルなのかもしれないと考えを巡らせれば、本作の鑑賞意義もあったと言えようか。

後、同じようなコンセプトで日本人が映画を作ったなら「アメリカさんお邪魔いたします・・・」というような謙虚な、言葉を換えれば窮屈(←卑屈の方が適切かも)な仕上がりになると思われるが、「ここは本当にアメリカなのか?」と奇妙な感覚にとらわれるほど中国映画になっていたのは天晴と感心するしかない。
現在のようにアメリカが中国にぐいぐい押されても全然おかしくないわけだ。


追記:投稿後に台湾人監督による台湾映画と知りましたが、父親と老婦人が中国北京出身という設定だし、台湾も正式には「中華民国」なので語句は変えません笑。

002007
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