Makiko

あんなに愛しあったのにのMakikoのレビュー・感想・評価

あんなに愛しあったのに(1974年製作の映画)
3.4
イタリア名優列伝のオンライン上映で。
内容を追うのに集中してカメラの云々に気を回している余裕がなかった。

映画愛にあふれた作品で、見ていて楽しい部分もある。
おしゃべりなシネフィルのニコラに関してはリアルで疎まれるタイプのシネフィル表象だったと思うのだけど、ニコラがパンピーのテレビ司会者や証言者に理不尽に言いくるめられるシーンはさすがに可哀想だった。
終盤にニコラが正しかったことを証明するシーンはあるものの、それ以上に本編全体に流れる「時の流れは残酷」的な空気が勝ってしまい、観ていてしんどい映画だった。

目を背けたくなる現実をしっかりと見せてくるタイプの物語。映画好きのための映画でありながらも、メタ的・舞台演劇的な演出があることによって観客は映画の中に没入することを妨げられている感じ。
映画というのはまぁ大体120分くらいで、映画館という箱に拘束されて短時間で集中する+視覚と聴覚を預けて観ることで、非常に「簡単に没入できる」メディア。それゆえに便利な現実逃避ツールとして使われることが多いと思うのだけど、この映画は「これはフィクションなんですよ」とたびたび念を押してくるので、観ているこちらにとって拷問に近い辛さがある。
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