オザキ

ドラえもん のび太とアニマル惑星のオザキのレビュー・感想・評価

4.8
<ドラえもん映画徹底レビュー vol.2>
私が2番目に好きなドラえもん映画です!この映画は数多くのドラえもん映画の中でトップクラスに素晴らしい「ストーリー」と「メッセージ性」を兼ね備えた作品であると胸を張って言えます。

緻密に練られた展開と伏線回収、そして人間と動物を対比したメッセージ性。全てのクオリティが高いです。

<あらすじ>
ある夜、のび太はピンク色のもやを見つける。その中に入ってみると、そこには人間のように立って会話する動物たちがいた。そこは動物が平和に暮らすアニマル惑星だったのだ。動物たちは、昔は月に住んでいたのだが、悪魔族“ニムゲ”に迫害されたため、神さまに光の階段でこの星に導いてもらったという。だが、この穏やかで美しい星にも危機が迫っていた。アニマル惑星のことを知ったニムゲが再び星を征服しようとやってきたのだ…。

以下、ネタバレアリのレビューになります。

ポイント①怖い
まず第一に、今作は他のドラ映画に比べ”ホラー要素”が大きく取り入れられた映画です。のび太が夜遅く目覚めると深い森の中…こんな始まり方を迎えるのはドラ映画の中でもかなり異質で、得体の知れない恐ろしさがあります。また、中盤でチッポが話してくれる神話の内容も相当怖い。動物たちをいじめていた悪魔族”ニムゲ”から逃れるため、地獄の月から光の階段を通ってアニマルプラネットまで渡ってきたという話。何とも不気味です。そして時に、不気味さやホラー演出はドラ映画で良いアクセントになっています(『魔界大冒険(旧)』や『海底鬼岩城』などがそうですね!)。否が応でも興味を引く内容になるので、子供が初めて触れるホラーとしては良い作品かも知れません😊


ポイント②メッセージ性
『アニマルプラネット』は特に前半でホラー要素を盛り込んでいますが、ただ怖いだけではなくそれを利用している点が面白い所です。皆が恐れていた悪魔族”ニムゲ”の正体は、結局”人間”であったということが後半明かされます。月の人類は環境破壊や核戦争の末、ガスマスク無しには外も出歩けないほど自分たちの星を汚染してしまうのです。一方、動物たちはその星から逃れ、自分たちだけで美しい理想郷を作り上げている。この2つの惑星の対比がとにかく痛烈です。この作品に出てくる月は、今まさに地球が歩もうとしている行く末の比喩であり、それが動物たちにとってどれほど脅威になるのか。それを”ホラー”という手段を使って強かに教え込んでくれます。子供にとっては「環境破壊」がどうのこうのと教えられるより、よっぽど心に刻まれるでしょう。

そして欲に目が眩んだ人間たち(ニムゲ)は、美しい動物たちの惑星まで自分たちの物にしようとやってくる。何と浅ましい人間たち。月に住む人類が今作で常に悪者として描かれている所も異質ですよね。今となっては『アバター』を彷彿とさせる様な筋書き。そして何より、この内容を子供向け作品のレベルに落とし込んでいる…やはりF先生は大天才です。

~終盤のび太とチッポの会話より~

チ「のび太さんは、どうして僕達の星を守ってくれるんですか?」
の「こんなに美しくて夢のような星だもの。」
チ「のび太さん達の星はどうです?」
の「(困った様子で)そりゃ、この星と同じくらい美しいさ…今はね。」
チ「今は?」
の「いや、これからもずっと僕達で美しい星にしていくさ。」
チ「いつか行っても良いですか?」
の「ああ、いいよ!」

やはり確信犯か!2人にこの会話をさせるために、今までの物語があったのでしょう。映画を観た後ではこのセリフの重みがまるで違って聞こえます。


ポイント③伏線回収&奪還
神話からの伏線回収はとても鮮やか!光の階段と星の船を見つけるドキドキ感!そして、ここで登場する最も重要なひみつ道具「ツキの月」飲めば3時間、信じられないほどツキまくるという。いや、最高過ぎませんかねこれ(笑) この場面でこの道具をチョイスするエンタメセンスには脱帽です。ついでに月まで行ってロミちゃん奪還しちゃうのび太の豪運(?)もナイス!本当に大好きなシーン✨😆

<総評>
子供向けタイトルとパッケージに騙されることなかれ、人間の環境破壊を見つめた強いメッセージが込められた作品。大人が見ても十分な歯ごたえがあります。
オザキ

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