強い

血と骨の強いのレビュー・感想・評価

血と骨(2004年製作の映画)
4.1
朝鮮人集落にて暴力と欲をのみを振りかざし圧倒的強者として生きてきた金俊平の止めどない怒りの一生。

たけし映画は監督作も出演作もハードなものが多い、ではあるけれど過去観た中で一番の胸糞最悪たけしだ。
豚肉を解体するたけし、蛆の湧いた臓物を溜め込み這い回る蛆虫を吹き払って喰うたけし、蛆臓物を妾の口に捩じ込むたけし、指で精子を押し込むたけし、子を拉致るたけし。不条理の極みに自らレッドカーペットを引いて前を睨み続けるようなヤクザよりもずっとおぞましいたけしの映画。

最初から最後まで全部たけしが悪く、奴にはまるで隙がない(いや正確にはどうにだってしてやれる隙ならばあったのだろうけれど彼の腐っても堂々たる強者っぷりがそれを誰一人にも許さなかった!)ので、当然そこに救いもない。

強いて言うのならば妾の介護をする姿や、打ち所悪く歩けなくなった時、呼ばれぬ葬式を経て、血縁のガキを拉致してあれだけ執着した金目のもの全てを捨てて北へ向かうその心に、もし少しでも“孤独”があったのならば、それは救いなのかもしれない。
この作品においては、たけしが孤独や虚しさを感じる事くらいでしか救いはない。それを救いと言えるのかは、知らん。

救われなさ、救わなさ、きっと地獄だってもう少し明るいのではないかと思える程の鬱々とした暗さ。湿気た城で醜く歪む美しい獣だ。
途中流れる「喝采」が胸に刺さった。

しかしなんというか、北野武作品でもよく思うのだけれど『たけしが通りの向こうに立ってジッと此方を見ている』みたいな状況、ただ立っているだけなのに本当に恐いよね。
他の作品だと國村隼が怖くて仕方ねえよ、といつも思うのに、たけし相手じゃ國村隼もあのザマか。ヤバい。ヤバ男ヒエラルキーのTOPである。
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