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ALWAYS続・三丁目の夕日のKuutaのレビュー・感想・評価

ALWAYS続・三丁目の夕日(2007年製作の映画)
3.1
山崎貴と向き合う②

前作で2時間かけて描いた日常と、未来に向かって伸びる東京タワーを、ゴジラが理不尽に破壊する。日常描写の前振りが効いている分、画面外から現れた尻尾が鈴木オートを一瞬で潰す衝撃は、歴代ゴジラ映画でもトップクラスだと断言する。冒頭3分で元は取れるし、前作を超えている。

あとの2時間20分は退屈だ。茶川(吉岡秀隆)の話がメインになった事で群像劇の忙しなさは減り、髪の毛が爆発するような、漫画的演出も抑え目に。キャラ説明も大方終わっているので、良い意味でマイルドに、落ち着いた内容になっている。しかしながら、肝心の茶川の話が面白くない。

淳之介に料理と洗濯を任せ、酔っ払って帰ってくる茶川。良い教育を受けさせたいと訴える淳之介の実父(小日向文代)が、まともに見える。そもそも「茶川が小説家として成功し、淳之介を養う能力がある」と証明する過程で、「執筆に集中するため、淳之介を隣の家に預ける」って脚本として破綻していないか。「茶川の気持ちが伝わってくる小説」が良しとされ、問題解決のキーとなることにも、職業作家がそれで良いのか?とモヤモヤ。

実父が現実的なツッコミを入れるのに対し、三丁目の人々は「人の心は素晴らしい」と強弁する。描写の詰めの甘さも含めて今シリーズの「美しい昭和の記憶」を呑み込むべきだと、ツッコミを入れるやつは冷たい資本主義者だと、言い訳をされている気分になる。

前作の医者のような、昭和の美しさからはみ出た人のエピソードは消えている。アウトローになりかけていた武雄(浅利陽介)は三丁目時空に吸収され、居候で空気に馴染めず、ツンツンしていた女の子も「鈴木家のお嫁さんになる」宣言をして去っていく。前作よりも三丁目の「純度」に磨きがかかり、息苦しさは確実に増している。
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