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ゆれるのbrn7のネタバレレビュー・内容・結末

ゆれる(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

感想長くなっちゃったな。役者さん方の演技が素晴らしかった。メモ。


猛は、かつて自分のものだと思った女性•チエコが兄•稔といい雰囲気になっているようにみえ面白くないと嫉妬心を抱く。

一時の軽い感情でチエコを抱くが、写真家である自分の写真集が何冊もあったことでずっと純粋な好意を抱かれていたことに気づく。

弟•猛にカマをかけて、軽薄な嘘で取り繕う滑稽な姿をみて兄は何を感じただろう。

兄•稔がチエコに寄せる好意にチエも猛も気づいていた。

渓谷のつり橋は不安定にゆれる

諦観した人生で、これまで兄•稔自身を支えてきたものは、"良い人の自分自身"であってそれが事件を機に根底から崩れてしまった。
抑圧された稔の想いがポロポロと出てくる。

猛は恐ろしかった。公衆の面前で自身の罪が露呈することと兄から裏切られることが。だが裁判所では稔は弟を陥れることはせず、むしろ猛の罪悪感が増すように演じてみせた。

なぜ弟の裏切りに気づいていながらそこまで自分を庇うのか、何か裏があるのではないか。面会室で猛は稔になぜ橋に行ったか問う。
はぐらかす稔。しつこく追求する猛。
稔に猛は、殺人者の家族になりたくない自分を守っているだけだと言われる。
猛にとって良い人の兄がこんなことを言うはずがなく、猛は兄に裏切られたと感じただろう。

兄は無意識か意図的かはわからないが弟を試しているように感じた。罪悪感と不信感を抱かせ、どこまでいけば弟は良い兄の偶像を諦めてくるのだろうかと。良い兄を求められれば、弟のことを許し続けなければならなかったのだから。

裁判での猛の裏切りともとれる証言を聞いて安心したような顔をしたのはもう良い兄の自分に戻らなくてもいいという安心感からか。


7年後、母の形見分けでもらったフィルムは兄弟の助け合う姿が映し出される。
兄の腕に残る爪痕•繋がる記憶、果たしてそれは美化されたものか、真実か。まぁそんなことはもう重要ではない。

あのラストシーンの兄の微笑みは、
散々都合良く良い人•兄として蔑ろにしてきた弟が泣きじゃくり帰ろうよと兄を求めてくる姿にかつての幼き弟と重ねた微笑みなのだろうか…。

兄と弟の間に架かっていた橋はゆれて、ゆれて。
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