ちろる

ゆれるのちろるのレビュー・感想・評価

ゆれる(2006年製作の映画)
4.4
田舎の町でおきた、ひとりの女の吊橋の転落事故。
人間の嫉妬、憎悪、疑念、裏切り。
これらの想いが人をどう動かし、これまでに人を変えてしまうのか。

誰もが抱えるその感情たちが一気に露呈した時すべてに番狂わせが起こる。



面倒見がよく温和な兄と自由奔放な弟の関係は離れていても友好で、何も問題がないかのようにみえるオープニング。
幼馴染の転落事故の謎をめぐる兄と弟の信頼と裏切り。

弟は兄のすべてを奪い取ってしまう。
都会での輝かしい生活も、好きな仕事も、そして想いをよせる女までも・・。

幼馴染の女智恵子に思いを寄せる兄、稔。
久しぶりに再会した元彼の猛はおしゃれで輝いていて、智恵子はふたたび彼に想いをよせる。
田舎で単調な生活に縛られる稔と智恵子。

同じ境遇のの二人はお互い傷をなめ合う様にしてお互いを見守っていたはずだったが、猛の存在がその諦めとも似た
平穏な日常を揺るがす。

風でゆれる橋を意とも簡単に渡る猛と、そのゆれる橋がこわくて渡れない稔。橋を渡ろうとする智恵子を必死で引き止める
稔の動揺。

吊橋をめぐる3人の心理描写が実に見事だ。
特に稔役の香川照之の保守的ながら、壊れてゆく演技は圧巻された。

兄弟というのは血がつながっているというだけで、じつは、近いくせに何にも知らなくて、相手の思いや苦しみに気がついていないこともある。

十字架を背負うことでしか、弟に対する疑念、嫉妬をリセットできなかった稔のあまりに不器用すぎる人生があまりにも悲しかった。

最近少なかった、泥臭さと地味さのある邦画ですが、
役者陣の演技力や、脚本のクオリティーの高さが光ります?
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