デニロ

ラブ・ストーリーを君にのデニロのネタバレレビュー・内容・結末

ラブ・ストーリーを君に(1988年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1988年製作公開。原作ディディエ・ドゥコワン。脚色丸山昇一。監督澤井信一郎。14歳の後藤久美子初主演映画作品。相手役は仲村トオル。母佐藤友美。佐藤友美とは離婚した父緒形拳。

別れ際、余命幾許も無い娘に、パパ!!なんて呼び止められたら階段を飛び上がって抱きしめるしかないじゃありませんか。

検査入院で急性骨髄性白血病と診断される中学2年生後藤久美子。余命半年。元気なうちは自由にさせましょうと母親と医師露口茂は申し合わせる。本人にはリュウマチ熱と言いつくろう。そんな帰り道、中学受験の際の家庭教師仲村トオルと街で出会う。

仲村トオルとバッタリ出会ったよと娘の報告を聞く佐藤友美は眉根を寄せる。ははあ、あったなこのふたり。家庭教師とその親のドロドロした関係。もう終わったはずなのに思い出させてくれるのね。そんな過去があったんじゃないかと思わせるシーン。よく聞く肉欲愛憎話です。

が、そんな話ではなくて、佐藤友美は悪魔的な企みで仲村トオルに娘の生と性を押し付けるのです。ここから物語は暫らく不快感が全面展開いたします。その不快感というのは大学4年生と知り合った当時は小学生だった少女の恋愛模様が延々と続くところにあります。いかに可愛いと言っても小学生はありえない、とそう思ったのですが、そういえば最近小中学校で教員と生徒の妖しい関係の報道なんかを見聞きしていると、教員になった理由は子どもが好きだから、そんな理由で教員になりその目的を達したと、そんなことを知るのです。なんと、本作の仲村トオルの希望職種は中学校教員。わたしの頭の中は悪いほうへ悪いほうへ転がっていきます。

仲村トオルは大学の山岳部。彼を慕う後藤久美子は山岳部の部室に彼を訪ねたり、『泥だらけの純情』の如く彼のアパートに行ってカップラーメンを食べたり、山岳部のコンパなんかにも参加するんですが、この大学の山岳部男しかいません。異様な雰囲気のなかに中学生の女の子を放り込む。ビールまで飲ませます。もうすぐ死ぬ設定だからなんでもさせようという製作者の恩情か。これも不快感を上乗せします。

そんな妄想を打ち払ったシーンが冒頭に記したパパとの別れのシーン。

ラスト。もう祭りは終わりという後藤久美子にまだ何も終わっていない、山に行こう!!という仲村トオル。登山靴、登山ウェアを買い母親と医師に許可を求める。佐藤友美も露口茂もいいかんがえだ、と言ってふたりを見送る。佐藤友美に至っては後藤久美子のくちびるに紅を塗る残酷さ。本気かね。露口茂という医師はことあるごとに佐藤友美の傍にいる。医師が患者の家のホームパーティになんていくものだろうか。もしやすると。まあよい。行った先は西穂高。疲れ果てせん妄状態に陥った後藤久美子。/行くのよ、頂上に行くのよ。/山ではパートナーと離れてはいけない。ふたりで登ったらふたりで下りるんだ。/そう言いながら死に行く後藤久美子を背負って山を下る仲村トオル。これ、ふたりで下りていると言えるんだろうか。

国立映画アーカイブ 逝ける映画人を偲んで 2021-2022(澤井信一郎、(編集)西東清明) にて
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