要

アシク・ケリブの要のネタバレレビュー・内容・結末

アシク・ケリブ(1988年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

1964 火の馬
1968 ざくろの色
1985 スラム砦の伝説
1988 アシク・ケリブ ◀︎今ここ

開放感がすごい。
役者やカメラの動き、音楽、舞踏すべて今作が一番アグレッシブだった気がします。ソ連解体へと向かう時期の制作で政治的縛りがなくなったからなのか、パラジャーノフも60代になり、やりたいことすべてやりきったということなのか…。本作が遺作となりました。
原作は、19世紀に書かれたおとぎ話ということです。

あらすじ(ねたばれ)−−−−−−−−
心優しい吟遊詩人アシク・ケリブは、富豪の娘マグリと恋に落ちるが、貧しさを理由にマグリの父親から結婚を拒まれてしまう。ならば金持ちになってきたろやないかいと、身を立てるための修練の旅に出るアシク。様々な土地で歌い、困難を乗り越えながら放浪する。やがて、マグリがほかの男と結婚させられようとしていることを知り、目の前に現れた聖人の白馬に乗って故郷へ駆け戻る。2人は無事に結ばれる。
−−−−−−−−−−−−

見やすい!(と感じるのはもはや麻痺)
前3作を融合させたような印象。明確な筋書きがありながら、映像の強烈な個性も生きている。そのバランスの良さが逆に4作中で印象に残らないといえばそうなのかも…
たまに、ここ笑うところかな…?という娯楽映画っぽさも感じました。

パラジャーノフは映画監督である前に画家で芸術家、というのを実感。見せたい絵ありき。

4作を通じて頻繁に登場する赤いザクロやその果汁は、喜びや苦痛に満ちた命そのものであり、親子・民族間で受け継がれる血の象徴にも思われるのですが、本作では白や黒のザクロも出てきて、黒は死や絶望、白は純愛や平和、祝福されたもの、というように色も効果的に使われています。

問いが重い『スラム砦〜』のあとで、救済というかハッピーエンドが描かれているところが4作の締めくくりに良かったです。
物語がめでたしめでたしと終わった後、アシクの放った白い鳩が撮影カメラにとまるという映像が差し込まれ本作が盟友タルコフスキーへの追悼作であることが明かされます。ここがグッとくる。平和と魂の象徴である鳩が、アシク(スクリーン上の存在)から放たれカメラ(現実、映画撮影の象徴)に舞い降りるのは美しいイメージ。
鳩がスッと留まらなかったんだろうな…雜な編集もなんかもう愛嬌。
要