rage30

マッチ工場の少女のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

主人公はマッチ工場で働く女性。

機械化された工場では会話をする相手もいなく、家に帰っても冷淡な親との会話もない。
その結果、ほとんど台詞がないまま進行するのだが、この何とも物悲しい世界観が印象的だった。
(劇中、初めて発せられる台詞が「売春婦め!」というのも強烈。)

主人公は恋人を作る為に努力をするのだが、これがまた上手くいかない…どころか、事態はより悪化していくばかり。
最終的には恨みを晴らさんとばかりに、周囲の人間を毒殺していくのだが、尊厳を踏みにじられた女の静かな怒りが沸々と伝わってきた。
今で言う、無敵の人に近いというか、主人公の様な人間は現代にもいるのだろう。

徹頭徹尾、救いのない話ではあるものの、意外にも、そこまで見ていて辛くはならない。
そこはフィックス中心の撮影で主人公に寄り添い過ぎない適度な距離感、淡々としたテンポや間の取り方、60分という短尺も丁度良かった様に思う。
また、歌の歌詞で主人公の心情を語らせる演出など、ユーモアを感じさせる部分もあり、ただの胸糞映画で終わらない、アキ・カウリスマキ監督の作家性を感じられる一作である。



余談だが、冒頭にあるマッチの製作過程が興味深かった。
マッチがどう作られているかなんて考えた事もなかったし、もっとアナログな作り方をしているのかと思いきや、ほとんどオートメーション化しているのも驚き。
機械化された…冷血な社会を暗示する意味でも、象徴的なオープニングと言えるだろう。
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