きえ

カメリアのきえのレビュー・感想・評価

カメリア(2011年製作の映画)
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世界10大映画祭でありアジア最大映画祭である釜山国際映画祭のプロジェクトとして製作された作品。
3話からなるオムニバスで映画祭に縁のあるタイ、日本、韓国の監督が釜山を舞台にそれぞれ過去、現在、未来の愛の物語を描く。

日本からは行定勲監督が参加。
第2話『Kamome』を監督。
脚本は伊藤ちひろさんと共同脚本。

何故この作品を見たかと言うと知り合いが関わっていたから。エンドロールには勿論名前が。なのでこの『kamome』しか鑑賞していません。レビューもこのパートのみで書きます。全話を見てないのでスコア付けはしません。

お話はと言うと、韓国人の撮影監督と”かもめ”と名乗る不思議な日本人女性との一夜のほのかな恋を描く。

撮影監督役にはソル・ギョング、日本人女性役には吉高由里子さんが演じ、韓国語、日本語、英語を交えてコミュニケーションを取ろうとする男女が微笑ましく描かれている。ソル・ギョングの人間味と吉高さんの透明感溢れる演技が素晴らしい相性となってストーリーを運ぶ。

連ドラ1話分ほどの尺を使ったシンプルなストーリーは勘のいい人には展開が読めてしまうかもしれない。私は鈍感力が強いので最後までとても楽しめた。なるほどな。ネタバレ系なので内容には触れません。

この作品ロケーションが素晴らしかった。釜山と言うと海辺の町だけど、作品に出てくるのは誰もが知る釜山ではなく全く別の顔。

中でも物語で重要な役目を持つ峨嵋洞(アミドン)という韓国のマチュピチュと呼ばれる長い長い階段が続く場所はとても印象的だった。行定監督のインタビューを漁るとロケハンをする中で風景からインスパイアされシーンをイメージしていったと言う。細い路地や古本屋などもとても効果的に使われ新しさと古さが同居する釜山を感じる事が出来る。

この作品の会話にはツボが結構出てくる。

撮影監督の男が女に「黒沢明『7人の侍』」と日本語でいい、続けて英語で見た事があるか?と聞く。脈絡がない突飛な質問に見えて男にしてみれば日本人との共通単語なのだ。で面白いのが韓国人が知ってて日本人の若い女性が知らないと言うあるあるな落とし込み。分かってるね〜

実は行定監督は幼少の頃、黒沢明監督の『影武者』の現場に潜入した経験が映画世界への目覚めだったそうだ。更に映画人として歩み始めたペーペーの頃、エドワード・ヤン監督の『クーリンチェ少年殺人事件』の撮影現場にも何故か撮影機材を届けに行かされて潜入すると言う幸運に恵まれていた。

それらを踏まえての前述の台詞と、もう1つ暗闇の浜辺で呟く『映画人にとって闇こそ自由だ』と言う台詞。紛れもなくエドワード・ヤン監督に特別な思いを抱く行定監督自身を投影している。

私は私で節々に感じていた。
闇、夜の浜辺、ムーンライト、時空…
知人の顔が浮かんだ。らしいな。
見れて良かった。
きえ

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