三樹夫

ゴジラVSデストロイアの三樹夫のレビュー・感想・評価

ゴジラVSデストロイア(1995年製作の映画)
3.4
平成ゴジラ完結編。初代とつながりのあった84ゴジラからこの映画まで平成シリーズは全てつながっており最後は初代と絡めて終わりを迎えるという綺麗な完結の仕方だったと思う。完結と言ってもこれで終わったわけではないが良い区切りはついた。この映画はいきなりゴジラの咆哮と、1954年の『ゴジラ』を意識した始まり方をする。
前作より1年後、初代より約40年後、ゴジラはもはやメルトダウン寸前で、しかもオキシジェン・デストロイヤーにより新たな怪獣デストロイアが生まれた。原爆はゴジラを生み出し、第二の核ともいえるオキシジェン・デストロイヤーはデストロイアを生み出すという、業を象徴する怪獣がそれぞれ出てくるのいいじゃない。メルトダウン寸前のゴジラのデザインいいじゃない。今まで滑っていたトレンディドラマや洋画のゴキゲンなノリを排しシリアスな雰囲気いいじゃない。と思ったらまたハリウッド志向で思いっきり『エイリアン2』やってるし、人間がミクロオキシゲン放射くらって吹っ飛びガラスぶち破る香港映画みたいな演出は一体何…目をつぶろう。バーニングゴジラ対デストロイアのビームでビルを横一文字にぶった切ってド派手な爆発あるケレン味溢れる特撮いいじゃない。溶解していくゴジラには目頭が熱くなる。
スケジュールの都合で出演できなかったため『ゴジラvsビオランテ』で高嶋兄弟のホテルマンの方こと高嶋弟がやっていた役は、代わりに高嶋兄弟のプログレの方こと高嶋兄が演じるというとてもややこしいことになっている。「これで来年度の予算はゼロだな、来年度があればだが」と相変わらずカッコつけた台詞があるが、全体的にシリアスで抑え目な雰囲気の為そこまで気にならない。大沢さやかの「恋も結婚もしたい」の台詞の方が恥ずかしかった。

84ゴジラからこの映画までの平成シリーズは大きくは反核というので貫かれていたと思う。この映画のゴジラがメルトダウンすればどうなるかなど、随所に核への反発が描かれていた。
平成シリーズは良いところもあるがキツいところも目立つ。子供向け、生物感、ハリウッド志向などがシリーズに共通するか。
反核や地球環境などシリーズごとに色々なテーマがあったが、テーマの提示の仕方が「このえいがのてーまははんかくです、ちきゅうかんきょうです」みたいな、子供でも分かるよう誰一人として分からない人を出さないようにという説明過多だったり分かりやす過ぎるように思えた。
渡り鳥みたいな習性とか原発の燃料を補給や腰部分に第二の脳などゴジラの生物感を出し過ぎで、怪獣としての神秘性は下がり、そういうことじゃなくない感がある。生物感を高めることでリアリティを出そうとしていたのだろうか。またゲーム感覚にゴジラを倒すというのも、ゴジラを倒すとかそういうことじゃなくない感があった。
ハリウッド志向というかハリウッドもどきは、シリーズで様々な洋画を分かりやすいぐらい意識し思いっきり真似していたが、色々な面で元の映画に及んでいないのが見えてしまうのが辛過ぎた。またそのシーンが大して面白くなっていないのも問題だっただろう。

昭和ゴジラを観たことがある親とその子供くれば興行収入増えるという戦略で昭和の人気怪獣頼りな所もあったが、それでも半分近くはメインのオリジナル怪獣を出しているししっかり挑戦はしている。平成シリーズの観客動員は上からモスラ、デストロイア、メカゴジ、スペゴジ、84、キングギドラ、ビオランテの順になっている。
火口からすごくカッコよく現れるゴジラ、超高層ビルを壊すバトルやシンプルにカッコいい川北特監のビームなどケレンがあって面白いシーンはあるし、これ観れたからいいやと最低限満足はできるシリーズであった。
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