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ゼロの焦点のtakのレビュー・感想・評価

ゼロの焦点(1961年製作の映画)
3.9
2023年12月13-17日の北九州国際映画祭で上映される旧作から。
https://kitakyushu-kiff.jp/

映画祭では北九州出身の松本清張原作の映画が3本上映される。セレクトしたのは、清張フリークでもあるみうらじゅん氏。そのうち1本がこの「ゼロの焦点」(1963)。クライマックスで能登半島の断崖が登場し、緊張感ある謎解き場面となっている。現在の2時間枠サスペンスドラマの原型という意味でも観て損はない。みうらじゅんはこの作品で崖好きになって、グッとくるグッドクリフを探して(みうらじゅん「いい崖出してるツアー」歌詞より♪)、あちこち旅をすることになる。そんなきっかけとなった作品。

謎解き場面の回想を除いて、失踪した夫を探す新妻の姿を、カメラはとにかく捉え続ける。彼女と共に能登半島の寒空を歩いているような没入感。95分の尺で余計な情報がない映画だから、なおさら集中できる。モノクロの映像が日本海の曇った空や荒れる波をさらに冷たく感じさせ、クライマックスの崖で気持ちが高まってしまう。

物語に描かれた頃はお見合い結婚が主流だったし、駐留していた米国兵の相手を生業としていた女性たちがいた時代。過去や素性を深く知らずに結婚することはよくあることだったに違いない。ヒロインは夫の謎を追うことになるけれど、物語は女性たちの過去も紐解いていくことになる。

ラストに漂う悲壮感。犬童一心監督によるリメイクは未見だが、挑んでみよう。やっぱり清張ものは面白い。

2023年11月、U-NEXTの配信で再鑑賞。鑑賞記録は初回を記す。
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