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自動車泥棒の一のレビュー・感想・評価

自動車泥棒(1964年製作の映画)
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"酋長"こと安岡力也をはじめとした混血孤児院の悪ガキたちによる『新学期・操行ゼロ』。でも枕の羽根は舞わず、鶏を殴り殺し「ちくしょー」と声を上げながら羽根をむしり取る。残酷な悲痛の行き止まり。他の孤児たちが養子にもらわれていく一方で、盗んだ車の部品で車を組み上げ港へ向かいアフリカを目指すことにこだわる力也が切ない。最期に目に浮かぶのは荒原を駆けるキリンの姿。大好きな『カリートの道』の看板を思い出すような手の届かない楽園の地。ラスト、パートカラーで海と空の青が目に飛び込んでくる。例えば『地獄の逃避行』に流れるカール・オルフのような、武満徹の優しくフォーキーな音楽が素晴らしい。
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