一

喜劇 昨日の敵は今日も敵の一のレビュー・感想・評価

喜劇 昨日の敵は今日も敵(1971年製作の映画)
-
なべおさみと堺正章がいつものように全くノレないお笑いをやっている序盤は范文雀の空手シーン以外正直しんどかったが、彼らがアルバイトする箱根のホテルに平田昭彦たちが現れてから一気に面白くなる。箱根独立共和国の建国を目指す右翼テロリスト平田のモデルはおそらく前年に市ヶ谷で死んだ三島由紀夫だし、これが政治風刺映画であるならば、なべ率いる大学応援部とヒッピーもどきのマチャアキとの対立は学生運動のメタファーだろう。若松孝二にはさすがに及ばないが、結構肝の据わったことをしている(しかしここで切腹を試みるのは、交番駐在いかりや長介である)。平田たちが精神病院から脱走した誇大妄想患者であったという設定は色んな方面から怒られそうではある。が、彼らの仕掛けた起爆装置のスイッチが押されたときに打ち上がる花火とそれを見上げる人々の姿が呼び起こす感動はなんなのだろう。エピローグでマチャアキとなべが「俺たち友達!みんな友達!」とイデオロギーを超えた友情を確かめあうとき、全く唐突に学生服を着た平田たちがただ1カットだけ再登場するという一見精神病者をコケにした大オチに滲む優しさはなんなのだろう。僕はなぜか泣いたのだった。
一