Kientopp552

軍法会議のKientopp552のレビュー・感想・評価

軍法会議(1955年製作の映画)
3.0
 ポスターに軍服を着たG.クーパーが見えるので、本作は戦争映画ではないかと思ったら、それは間違いである。本作の題名『軍法会議』(原題:The Court-Martial of Billy Mitchell)が正しくも暗示するように、本作は、法廷劇である。そして、本作は、法廷劇を描くことで、「Air Forceアメリカ空軍の父」と言われるBilly Mitchellの人柄とそのヴィジョンが如何に正しかったかを明らかにする作品である。

 どの程度かは知る由もないが、ある程度は(Mitchellのことをウィキペディアで読んでみると、「可成り」)理想化されているB. Mitchell像を、善良な優等生ながら、内には人間的威厳を秘めた人間を演じさせるには持って来いの役者G.クーパーが体現している。しかも、本作では、Mitchellが自分の持ったヴィジョンに対して如何に確信的であったか、そして、彼がその確信に対して如何に堅固であったかという本人の性格性が加味されている。

 このヴィジョンと信念の人Billy Mitchellを「審問」するのが、ロッド・スタイガーが名演している辣腕の軍事法律家Guillionギヨン少佐で、彼が、その巧妙な論述で、軍律を破り、(上官に対する)軍人的忠誠心に欠けたと言うMitchellの「罪」を暴きだすのである。愛国に基づく自己の信念と、それに対する軍人的忠誠心を巡るこの論争場面こそが本作のクライマックスである。論戦の醍醐味という点で、本作は、法廷劇の、知的であるが、スリリングな展開を満喫させてくれる。

 監督は、Otto Premingerオットー・プレミンガーで、本作が撮られた前年の54年には『帰らざる河』(M.モンロー主演のウェスタン)を制作している。画面比率2.55:1のCinemaScopeで撮られた本作の撮影素材は、「WarnerColor」と聞き慣れない素材であるが、調べてみると、元はEastman Colorで、映画会社Warnerがこれを使ったことで、「WarnerColor」と呼称しただけのことであると言う。本作と同様に55年に制作された『エデンの東』(エリア・カザン監督)の映像素材もWarnerColorであり、こちらは、Eastman Colorらしく冴えた色調であるのに対して、本作での色調は、何かくすんだものであり、歴史的事実を回顧して述べる本作のスタンスには合っている色調に思える。
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