本作は西村滋さんの自伝的作品「お菓子放浪記」の映画化作品。
作品は孤児となった主人公アキオが、第二次世界大戦前後の過酷な時代を強く生き抜く姿を様々な人々との出会いを織り交ぜながら描いていく。
主人公アキオを演じた新人・吉井一肇くんが凄い!
映画初主演とは思えない演技で、初めから最後まで観客の心を捉えて放さない。
そして彼の歌う「お菓子と娘」が昭和の香りがして心地良くて、鑑賞後も思わず口づさみたくなります。
共演者達もベテランの芸達者な役者さんばかりで彼を盛り立てます。
彼の里親となる業突張り婆さんを人間味豊に演じたいしだあゆみさん。
ラストの方でアキオを応援するシーンには思わず目頭が熱くなった。
本作の一輪の花のような、優しくて清潔感ある女性教師・陽子を演じた早織が一服の清涼剤のようだ。
また旅芸人を演じた林隆三さん、中盤で確かな存在感を発揮していて作品に重みを与えています。
この作品のロケ地の大半は東日本大震災の被災地です。
映画で登場した劇場も松林の風景等も被災して在りし日の面影もないと聞いています。
またエキストラで参加した地元の人々も多くの方が被災者とのこと。
戦争で全てを失ってしまったアキオをはじめとした沢山の人々と、今回の大震災の被災者の方々がどうしてもオーバーラップしてしまう。
戦争で心も荒んだアキオが一人放浪していくなか、様々な人々の優しさと出会い、それを糧に生き、心を取り戻していきます。
その温もりが観終わった後も余韻として心に残ります。