Jiyong

東京物語のJiyongのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.3
大好きな映画。普通に泣く。

サイレント映画かってくらい画面が強い。
会話してる人物を写したり、カメラが固定だったり、演劇みたいにも見えるけど。
モンタージュよりも画面の構図を大切にしてるから、家具や風景の線の使い方が凄い。ミリ単位でカメラの位置に拘ってるんだろうな。
皆が過ごす居間もその手前の部屋から移すことで奥行きがうまくいかされてるし、全体的に奥行きをうまく使った絵作りだったと思う。
家族全員が収まる画面での役柄との対比や三角形の使い方など、その辺は細かく分析してる論文でも読んで欲しい。

老夫婦が2人で並んで海を眺めるシーン、好き。
向かい合うんじゃなくて、同じ方向を向く。けどその先には家族はいない。っていう切なさ。
僕は絶対、息子娘たちと同じ冷たい人間だと思う。
封建的でもないし、保守的でもないし。家族だから絶対大切にしなきゃいけないとも思わない。
この老夫婦は、「何もしなくていい、そこにいてくれればいい」っていう微かな願いも届かず、なんかうまくいかない。だけどこの夫婦は絶対に愚痴を吐かない。娘にちょっと軽口叩かれても、箱根に追いやられても、その先で騒々しい夜を過ごしても、悪口を言わない。それが封建的ではなくて、嫌味を感じなかった。

戦後の評論家たちには「時間の流れが遅い」と言われていた小津安二郎の映画だが、ヴィスコンティのような「貴族の時間の流れ」を感じず、老夫婦の時間の流れに近い感覚があった。だから嫌いじゃないのかも。

笠智衆の演技がめちゃくちゃ良かった。当時40代?のはずなのに完全におじい。
Jiyong

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