rage30

東京物語のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

東京物語(1953年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

東京に住む子供の元を訪れる老夫婦の話。

何気に小津映画を見るのは初めてだったのですが、フィックスのカメラや淡々とした日常描写といったイメージはそのまま。
スタンダードサイズの画面は小さいものの、徹底してローアングルなショットは面白いし、俳優の姿勢にも拘ったという構図は美しく、目を見張るものがありました。

意外だったのは、カット数が多かった事。
ワンカット長回しの、のぺっとした映画なのかと思いきや、会話シーンではバストアップの画が挟まるなど、思ってた以上に画変わりするし、テンポも良い。
この辺は結構エンタメ性を意識しているのかもしれません。

物語的には、老夫婦が子供のいる東京に向かう話で、最初は“古き良き日本の家族”が描かれるのかな~と思っていたんですよ。
ところが、この老夫婦は子供達に歓迎されるどころか、むしろ疎まれてしまうんですよね。

「もっと親を大事にしろ!」と思いつつも、子供達の対応に共感してしまう自分もいて。
特に杉村春子演じる、志げの遠慮のない物言いには安心感すら覚えたというか、こういうオバチャンっているよな~と思わされた次第。

でも、決して彼女は薄情なわけでもなく、日々の生活に追われて、老人の相手をする余裕がないだけだし、母親の死には一番に涙を流したりもする。
志げに限らず、子供達は特別善人でもなければ、特別悪人でもない、どこにでもいる普通の人に過ぎないのです。
「嫌な世の中ね」という台詞が象徴する様に、現実って、こんなものよね…という諦観はなかなか刺さるものがありました。

あとは、老夫婦に一番親切にしていた紀子が、血の繋がった子供達以上に家族的な絆を結ぶラストも印象的。
最終的に亡くなった妻の形見を譲り受けるわけですが、まさか『グラントリノ』的な血縁に拘らない継承が描かれるとは、思いも寄りませんでしたよ。
最初に予想した“古き良き日本の家族”とは、まるで逆の、むしろ血縁による古き家族観を否定する話になっているので、もしかしたら、この辺が日本のみならず、世界中で本作が愛される理由なのかもしれません。

記念すべき初の小津映画鑑賞となりましたが、思っていた通りの部分もあれば、意外だった部分もあり。
やっぱり、実際に見てみないと分からない事があるものだなと。
小津映画の凄さの片鱗は感じれた気がするので、今後は他作もチェックしていきたいなと思います。
rage30

rage30