〖東京物語〗〔1953/日本/135min〕
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『住み慣れた尾道から20年ぶりに東京にやって来た老夫婦の周吉ととみ。長男や長女と会うも、彼らの生活は苦しく、温かくは歓待してもらえない。唯一、次男・昌二の未亡人・紀子だけは優しかった。後日、尾道に戻ったとみが脳溢血で死亡する』
小津監督の映画どれ観よ〜って調べてたらこれがいちばん有名っぽそうだったのでこれにした。
だらだら観ながらこの映画のすごいところ(そんな言い方はしてないが)まとめてる知らない人のnote読んですごーってなったりしてた。
ストーリー自体は年老いた夫婦が尾道から東京まで出向いて子どもたちに会うんだけど、最初こそみんなようこそ〜って感じだったけど割と早い段階でその存在を持て余して、自営で融通ききそうな実子たちは忙しい忙しいって熱海に行かせたりしてるんだけど、義理の娘(息子の嫁だけど息子はもう亡くなってる)だけは勤めてる会社休んで一緒に出かけたり家に泊めたりして、で、お父さんたちもう帰るわって帰るんだけど、帰ったらすぐにお母さんが急死しちゃって子どもたちが尾道まで来るんだけど長女がワッと泣いたと思ったら翌朝には形見分けの話してごはんもりもり食べて帰るわってさっさと帰り、他の兄弟も一緒に帰っちゃって結局また義理の娘だけが残ってしばらく過ごすっていう。それでお父さんがあんたはいい人だからもう息子のことは忘れて再婚しなさいって言ってお母さんの形見の懐中時計をあげて、義理の娘は泣きながらそれを受け取って終わった。
という感じで老いた両親がそこそこ蔑ろにされるのが見ててしんどいんだけど、リアルすぎて70年前の映画と思えない、70年?!というか昔から親子の関係ってこんなもんってことか。
長女が多少感じ悪いというかサバサバはっきりしてるんだけど、まあー気持ちわかるしなあーとなり、長男はああとかうんとかぼけっとした感じで、三男も気が利かなさそう(これは結構偏見かも)だし、こんなん義理の娘がしっかりするしかないじゃんね。もちろんそれがちゃんとできるのはすごいんだけど。
135分あるけど全然だるくなくてじっくり見入ってしまった。
この時代の人間性(?)なのかこの映画がそうなのかわかんないけど、口調が美しくて家族間で敬語なのとかめちゃいい。
人物が喋るときはカメラがバーンって顔うつしてくれることで没入してる感じになるらしい、なるほど。
引いてるときの定点カメラみたいな映像はなんていうんだろ、絵の額縁の中みたいな構図が徹底してて、それがめちゃくちゃ好き。
何気なくフーンってこっちは見てるけど多分すごい色んなところこだわってそう。
複数人に同じ角度で同じ動作をさせたり、とんでもロングショットが突如挟まれたりして、すごいこの人構図オタクなんかなって思った。狂ってるオタクが作る映画は本当に良い。
さっき言ってたnoteでミニマリズム映画みたいなこと書いてあって、あーなるほどーって思った。セリフも短く、長回し使ってるけど無駄なとこなくて画面はくきっとぱきっと構図が決まりまくってるし、だから観てて気持ちいいのかもなあと思った。
そしてこういう映画観てて珍しくちょっと泣いちゃったんだけど、お父さんが息子にお母さんはもう明日の朝まで持たないだろうっていわれて、「そうかあ」みたいな返事するんだけど、それだけなんだけどなんかすごい泣けちゃった。
あとは最後の義理の娘が懐中時計受け取るところの涙がぶわってこぼれる瞬間。とんでもなかった。なんだろうね、セリフとかじゃないのにその間とかちょっとの表情がすごい。
てか原節子が美人すぎる。ずっと笑顔なのが若干こわいけど、まあ小津安二郎がいいっていうならいいか…
そんな感じ。
ストーリーはそんなに大きな起伏はなく日常の話なんだけど、そういう構図とか人の仕草とか見てるだけで楽しい映画。
こうして小津安二郎のことは信頼してるけど、小津安二郎信者らしいヴィム・ヴェンダースやジム・ジャームッシュの映画は全然刺さってない。
もうちょい小津安二郎のこと知ってから観たらまた感じ方変わるんかな。
なんかこの人の撮り方とか作り方とか色んな人がまとめられるぐらい確立してるけど、AIに作らせたら小津映画って作れるんだろうか、それっぽいのはうまく作れそう。
[64/おうち映画35]