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獣兵衛忍風帖のくりふのレビュー・感想・評価

獣兵衛忍風帖(1993年製作の映画)
3.5
【忍者の額縁】

アマプラ見放題にて。公開30周年記念による配信開始とのこと。私は初見。てっきり、山田風太郎辺りの原作モノかと思ったが、川尻善昭さんのオリジナルなのですね。

当時は確かに、川尻アニメはよく目にしたので、商業的信頼度も厚かったのでしょう。

時代の差から新鮮だったのは、画面の四隅に額縁のような強度があること。CGが蔓延ってくるとこの額縁感は失われ、だらしなさが伝わりもするので、この画風にはストイックな美学さえ感じます。窮屈でなく、額縁を活かしたアクションを見せてくれる。

一方お話しは…敵忍、詰め込みすぎでしょう。www おかげで、話の背骨が埋もれている。元々、TVシリーズ用の企画だったのでは?だって、1クール分くらい敵キャラ出てくるよ!

個々のキャラとの闘いは個性際立ちオモロイんだけど、こう数珠つなぎにすると、個々の味が薄まってしまう。高い死闘度や非情さは伝わるが、一泊コースを日帰りでこなしたように慌ただしい。勿体ないよね。特にエロい女陰いや女忍は、もっと艶技コースも多産のハズ。

山寺宏一の声は、獣兵衛というより山寺宏一に聞こえちゃう。話の背骨が埋もれ、出来事に追われるばかりの影響も大きく、この主人公がどんな人物なのか、よくわからなかった。

腕のいい忍だが、パターン化された感情を返す人形に近い。心の掘り下げは浅いよね。

エロい女陰いや女忍と書きましたが、そういや、本作にエロくない女って出て来ないな。90年代に顕れた、封建制が背景の“時代”劇だから、女の描き方は仕方ないかもしれないが、性ではなく頭脳プレイで出し抜く女も出てきてほしかった。彩り豊かになるしね。

平松伸二か原哲夫か?というキャラデザも、時代ですねえ…。美人も皆、馬面なのか。

とはいえニンジャってよりマジシャン、いや、もはやモンスター…な珍妙敵との劇画バトルに目を奪われておけば、昏い痛快作として一気に、楽しめるのではと。

作られた時代を照らす、良作と言えましょう。 

<2023.11.27記>
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