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ワイルドバンチ/オリジナル・ディレクターズ・カットのSのレビュー・感想・評価

4.0
バイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパー監督による傑作西部劇。

20世紀初頭のメキシコを舞台に滅びゆくアウトローたちの姿を描く。

1913年、アメリカ・テキサスでの銀行強盗に失敗したパイク率いる中年強盗団はメキシコに逃走する。旧友ソーントンら賞金稼ぎに追われる中、メキシコ政府のマパッチ将軍の依頼で米軍用列車から武器を強奪するパイクたちだったが、マパッチの裏切りに遭い、仲間を人質に取られてしまう...。


時代の波に取り残された無法者たちの滅びの美学を描いた「最後の西部劇」と呼ばれ、ペキンパーの最高傑作として高く評価されている。定義次第では「アメリカン・ニューシネマ」の一つとされる。

血なまぐさく、残酷極まる殺戮シーンを美しく捉え暴力の美学を引き出し、スローモーションに細かいモンタージュのカットを挿入するペキンパーのアクション演出は後続に大きな影響を与えた。
ことに大鉄橋がこっぱみじんに爆破され、馬ともども男たちが川に落下するシーンは忘れがたい。

冒頭から、流血洗礼のような幕開け。最早西部劇と言わず戦争映画と呼ぶに相応しいほどに、戦闘に無関係な市民を無神経に殺傷し、刺激を追求したアクション描写は行き過ぎた演出だとも言えよう。
機関銃を使った大殺戮のラストで、戦いの描写に必然性もリアリティもなく、作りものの血糊が途方もなく塗りたくらている。

暴力に始まり、暴力で終わる映画だ。
ただし、ペキンパー監督自身は暴力嫌いで、あくまでも娯楽映画での暴力表現であることを徹底して描き切っており、マカロニウエスタンを始めとする西部劇のパターンを完全に解体している。

今回、ディレクターズカット特別版DVD177分を見たのだが、通常版は未見のため未公開追加シーンがどこか分からなかった。

2023/04/03 DVD
ディレクターズ・カット特別版177分
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