安堵霊タラコフスキー

快楽の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

快楽(1952年製作の映画)
5.0
マックス・オフュルスの最高傑作との評判も聞こえる今作、期待して臨んでみたらまさに映画を見る至上の快楽が味わえる美しい傑作だった。

話は短編2本と中編1本で構成されているが、メインとなる真ん中の中編が特に見応えがあり、田舎の風景がルノワールやジャック・ベッケルを髣髴とさせる美しさで描かれているだけでも素晴らしいのに、カメラワークに後のタルコフスキーやマルレン・フツイエフに通じる流麗さがあって実に感動的。

前後の短編もそれぞれ老いと男女の諍いを描いた佳作となっていて、こちらも見事なカメラワークと哀しくも美しい描写が目立つものだから、感動的な中編に白眉な短編2本が付属されているようで実に贅沢な構成だった。

他にもモーパッサンの語り口を忠実に再現したナレーションに中編で見られる室外から室内を映したショットのいじらしさ等、語り尽くせない魅力が100分以内に凝縮されていて、マックス・オフュルスの最高傑作と言うに相応しいと納得せずにはいられなかった。

美しい描写とカメラワークのおかげで何度でも見たくなる魅力が備わっていて、こういう感動的な映像を見たいが為に自分は映画を見続けているのだなとしみじみ思わされる、フランス映画屈指の絶品。