へちまびと

今そこにある危機のへちまびとのネタバレレビュー・内容・結末

今そこにある危機(1994年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

奇をてらわない展開。悪役といえどもリスペクトを忘れない描き方がいい。

この映画で一番好きなのはロバート・リッターだなぁ。自分だけ尻尾切りされないよう上司にしっかり書面で命令を残させたり、自分たちの都合で仲間を見捨てる男だが、それを正面切っていいと思ってやってない、苦虫を噛み潰したような顔がいい。白い巨塔の財前に通じるものがある。

最後に、大統領の執務室前で待つライアンとすれ違うとき、リッターは一瞬笑うのである。ライアンをボーイスカウトと揶揄しつつも、本当はそういう正義に憧れている、という描写だろうがこのシーンこそ白眉である。

リッターは、要するに普通の人間なのだ。ライアンのように、仲間や信念のためなら敵の中にすら飛び込むという勇気も強さもない。小狡く自分を守ることしかできない。しかし胸中には正義への渇望がある。等身大のアメリカ人という感じがしてすごくいい。

病床で長官はライアンに「君は公務に着くとき、国家に信義をつくすと誓ったはずだ。大統領ではないぞ。大統領の雇い主である国民に、君は誓ったんだ。それを貫き通せ」と言う。リッターも誓ったはずである。そして、弱さからそれを貫けない苦味をよく表現している。