塔の上のカバンツェル

西部戦線異状なしの塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
4.3
本日2018年11月11日が第一次大戦終結100周年なので。

第一次世界大戦映画としての立ち位置以上に、反戦映画として言わずと知れた先駆的な作品。
開戦から泥沼化する戦間期までを一若者とその周りの乱舞し、歴史に埋没していく人々の目線で描かれる。

第一次大戦の悲惨さは、近代国家の工業力の投入と国家総動員体制の確立、殺戮の効率化に支えられた、若者たちの生命を無尽蔵に投入した陣取り合戦を足掛け4年にわたり繰り広げたこともさることながら、終戦時に人々が願った恒久的な平和はおよそ20年と保たなかったことにある。
ロシアでは共産主義革命が20世紀の国際関係を決定づけ、名もなきオーストリアの一兵卒であった伍長がヨーロッパを殺戮の嵐に叩き落とした。
その意味で第一次大戦は、その後に続く2回目のより凄惨で圧倒的な暴力、ww1の国家間戦争以上の世界観の衝突を招く基礎を築いてしまった点で余りに絶望的である。


【2023.08.19追記】
第1回アカデミー賞作品賞受賞の1927年の「つばさ」を観ましたが、同じくww1を描いたトーキー作品なのに対して、2年後に第3回アカデミー賞作品賞を受賞した本作を改めて観ると、編集やシネマトグラフィ、アクションの演出など一気にクオリティが飛躍していて、当時観た人は本作をオーパーツ的に感じたんではないかしら。


今作のラストは主人公が蝶に手を伸ばしたかけたところで終わってしまう。
その無常観があの戦争を一重に語っているのではないでしょうか。