是枝裕和監督の長編デビュー作。
石川県輪島市の漁村で撮影されたもので、
能登半島地震で失われてしまった風景を感じたくて鑑賞。
子どもの頃に失踪した祖母を引き止められなかったことを悔いている主人公が、大人になり夫と息子と幸せな日々を送っていたが、ある日突然、夫が自殺してしまう。大きな悔恨を抱えながら再婚して輪島の漁村に移り住み、新しい生活を始める物語。
全体を通して構図が美しく、影や後ろ姿、引きでぼんやり人物を撮っているので、あまり主人公の感情を直接的に表現しておらず(押し付けがましくなく)、自然に遠くから見守るように感情を感じとることができる。
ぼんやりしか姿が見えないシーンだからこそなのか、江角マキコと内藤剛志と柄本明の声は、妙になぜか耳に入ってくる。
静かな映画の中で四季を通しての輪島の自然の厳しさや美しさの中で、一人の女性の大切な人の死による大きすぎる"喪失"と、ゆっくり流れる時間の中で過去を乗り越えまた新しく家族として歩み穏やかな気持ちを取り戻していく"再生"が繊細に描かれている。
