ふかい

ラルジャンのふかいのレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
4.7
ブルーレイ発売で再見。
やはり超絶的な面白さ。散文的に見えながら物語と編集は常に一定の連続性、一貫性を保っている(「全ては一枚の偽札から始まった…」的な)
男が食料配給カートからお玉を取る→お玉を振り上げる手のクローズアップ→笛が鳴る→お玉がガラガラと転がる…までの心地良すぎる繋ぎ。または、男が鎌を振り上げる→壁に血が飛び散る→ライトが消える の格好良すぎるショットの繋ぎなど、全てが完璧。
改めて色々な映画の影響源にあったことが分かる。よく言われている黒沢清「トウキョウソナタ」だけでなく、「アカルイミライ」は明らかに本作の撮り方を踏襲しているし、「日曜日は終わらない」もそう。
小切手が届いて不自然な涙を流すところも最高。

カーチェイスの所で足元だけを写し続けるところとか、ピアノからグラスが落ちそうになるところを写すところとかのセンスが爆発しててすごい。

最後に野次馬達が連行される男の方に視線を向けずに何もないドアの方を見ている謎めいたラストシーンについて、「事件が起こった際にその裏に渦巻くさまざまな因果を知ろうとせず、ただ表面的な部分を見ようとする第三者の空白性を示している」という解釈(町山智浩の映画無駄話より)が興味深く、吉田恵輔「空白」にも通ずるテーマかなと思った
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