デニロ

赤穂浪士 天の巻・地の巻のデニロのレビュー・感想・評価

赤穂浪士 天の巻・地の巻(1956年製作の映画)
4.0
以前どこかで観た記録がある。そんな記憶があったのだが無性に観たくなって今回は、VOD。
1956年製作。大佛次郎原作、新藤兼人脚色、松田定次監督作品。

生類憐れみの令で始まる本作。NHK大河「元禄繚乱」で見たような政治ドラマ。赤穂藩筆頭家老大石内蔵助、将軍側用人柳沢吉保、米沢藩江戸家老千坂兵部。権力のピラミッド構造の中で起こる衝突は実に面白い。権力などこんなことでしか実態を示せないのだ。

もはやわたしも何種類の赤穂浪士忠臣蔵の話を見聞きしたか分からぬ。わたしのいちばんのお気に入りシーンは、討ち入りの際、吉良邸隣家の旗本にかくかくしかじか挨拶に行くと、そこの主人が塀の隅々に提灯を用意させ誰であろうとこの塀を乗り越えようとする卑怯者は切り捨てろ、と奉公人に命じる場面。大石内蔵助一党がかたじけないと涙する。

本作はタイトルロールの頭に、東映の重鎮片岡千恵蔵がクレジットされ九条家御用人立花右近を演じる。確かに有名なシーンで涙を誘う。が、何で、と現代のわたしは思うが、これこそ製作された当時の政治ドラマなのだろう。父の汚名を雪ぐために千坂兵部の密偵となり身を汚すお仙高千穂ひづるが美しい。
デニロ

デニロ