すずき

ヴァイラスのすずきのレビュー・感想・評価

ヴァイラス(1998年製作の映画)
4.2
貨物船シースター号は嵐に巻き込まれ、牽引していた貨物を失って船長が自暴自棄となり、船は中破する。
なんとか台風の目に入り、2時間ほど嵐が止んだが、近くに別の船がいる事に気づき、助けを求める。
その船、ヴォルコフ号はロシア軍の船で、人工衛星との交信が任務だった。
だが、荒らされた船内には誰もいない。
遺棄船を届ければ謝礼に船の価格の一割が貰えるぞ!と喜ぶ船長と船員達だったが、女航海士フォスターだけはその状況を怪しんでいた。
船員らが切断されていた船の電源を復旧すると、船の設備が勝手に動き出し、謎の機械が起動する…

船という閉鎖空間の中で、謎の殺人ロボットに襲われるSFパニック作品。
男だらけの中で勇敢な女性が主人公、という事で「エイリアン」にも似たシチュエーション。
フィルマークスの平均スコアは3.0とかなり低いが、個人的にはコレかなり良いよ!
そりゃあ名作映画ではないけどさ、エンタメ作品に高尚さは求めていないし、ロボットと殺人と爆発があれば、他に何を求めようか。
エンタメとして丁度いい作品で、こういう映画こそ是非TVで放映して欲しい!

まずキャストが何気に豪華なのね。
主人公フォスターを演じるのはジェイミー・リー・カーティスで、強く冷静な女性でカッコいい。
ヴィランのエバートン船長はドナルド・サザーランド。
優秀そうなのは第一印象だけで、悪辣無能なダメオヤジ。
人類を裏切って上手く立ち回るかと思いきや、その末路は呆気なく殺人ロボの冷酷さにゾッとする。

それから本作の目玉、殺人ロボット達も多種多様なものが登場するが、どれも「機械」って感じでイイ!
これらはほとんどCGではなく、実物を作って操演で撮影されている。
ラスボスの大型ロボットも実物。
流石に派手なアクションになるとCGだけど、やっぱり実物があると存在感抜群だ。本作の特撮スーパーバイザーはフィル・ティペット御大。流石です!

そしてエグめのゴアシーンも少し。
船の機材から製作される殺人ロボット達は、なんと人間の肉体もパーツとして扱う。
機械のフレームに、人間の身体の一部が切り貼りされたロボットはグロテスクで素晴らしいッ!
「情報処理パーツ」である脳にも、電極やら回路やらが埋め込まれてるのを、開頭してしっかり見せてくれる。素晴らしいッ!

タイトルの「ヴァイラス」とはVirus、つまりウィルスの事。
「ロボットに寄生し生物全体のバランスを保つ役割を担う我々から比べれば 人間どもこそ地球を蝕む寄生虫!! いや……ヴァイラスか!」
という言葉通り、ヴァイラスとは超ロボット生命体ではなく人類の事なのだ!
しかし、その言葉は中盤で言われただけでその後は言及されず、特に作品テーマには関係しない。
そういう言葉、普通映画のクライマックスとかに言うよね?
何気に原作はコミックらしいが、そちらではタイトルが重要な意味を持ってたりするのだろうか。