プロデューサーの山内静夫さんが逝去され
追悼鑑賞。
以前見たときにはそれほど気がつかなかったけど、色彩がとても品良く美しい。
そう言えば
「浮草」の赤色もすごかった。
今回も主役一家はブルジョワである。
娘の結婚などなど
それぞれに悩みを抱えている。
ここまでは小津作品にありがちな
舞台設定である。
ところが、
そこに大きな一石を投じるのが
東野英治郎と杉村春子の親子だ。
うらぶれたラーメン屋。
教え子にペコペコし、
宴席の残り酒を大事そうに持ち帰る。
人生の輝かしい日々は遠いむかし。
言いようのない苦痛と寂しさが覆う。
歳を取るとはこういうことなのか。
この親子に比べれば
恵まれて見える一家だけど
それは誤解やごまかしでしかなく、
よく見るとそれぞれが孤独でいる。
戦後、日本社会は奇跡的な復興を果たし
高度成長という明るさの中にいた。
でも、
何かが置き去りになっている。
本当にこれで良かったのだろうか。
恐るべき遺作である。