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どん底のarchのレビュー・感想・評価

どん底(1957年製作の映画)
3.9
本作はかなり異色な作品であることは間違いない。まずキャスト陣がかなり違う。三船敏郎は居るが志村喬はいない。そして自分はあまり把握していないが実力派キャストを並べて、演技で見せるどこか舞台演劇に近い構造で作られていた。
そして舞台演劇要素を強める長回しの利用と長屋を中心にした物語展開も「虎の尾を踏む男達」「羅生門」以来の雰囲気である。
胸割長屋で生きる貧民の人間達。タイトル通り「どん底」を生きる人間達が逞しく生きる様を滑稽にだったり、時には恐ろしく会話劇にして見せた。
全体に終末感というか先のない刹那的な価値観が漂い、価値観の違う異常な空間が成立していて、しかしそんな地域が実在していたのだとも思わせるディティールも良い。音楽というものがいつの時代も貧困層の味方であることを表現されている。

黒澤作品の中でも小粒で粋な作品でした。
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