ソラアユム

主人公は僕だったのソラアユムのレビュー・感想・評価

主人公は僕だった(2006年製作の映画)
3.7
国税庁で働く会計検査官ハロルド・クリック(ウィル・フェレル)は生真面目で淡々とした日々を送る冴えない男。口数の少ないその男の行動や思考を事細かに説明するナレーションであったが、ある日”そのナレーション”がハロルドにも聞こえるようになった!そして彼は自分が誰かが創り出した小説の主人公であると悟るのだった‥‥

設定が非常にユニークで面白い。突然、自分の頭の中に小説の地の文の如くナレーションが流れてきたら誰だって混乱しますよ(笑)。しかもそのナレーションが「この時、ハロルドは○○のせいで自分が死ぬ事を知る由もなかった‥」なんて言われた日には‥‥死神でも悪魔でもない、全能性を持つ第三者=物語の作者により死の運命を告げられた主人公ハロルドの奇妙な物語の始まりです。

設定を生かした前半は見事な出来でした。文学研究者のヒルバード教授(ダスティン・ホフマン)曰く小説の推進力となるのは「外的要因」と「登場人物の行動」であり、物語の終りは例外なく「喜劇=ハッピーエンド」か「悲劇=バッドエンド」なのだと。

とにかく、ヒルバード教授とハロルドの会話のやり取りがコミカルかつ斬新で面白い。そのうえ、今作では「悲劇の終り」をなんとか避けようと奔走するハロルドと、物語の作者である有名悲劇作家カレン(エマ・トンプソン)が執筆中の小説の主人公ハロルドの死をどう迎えさせるかで苦悩する姿を上手いこと描いてます。

「よく考えてみろ。君は小説の主人公になるには、平凡過ぎる人生を送っている。魔法でも使えるのか?」

中盤辺りから若干間延びを感じつつも、結局どうなるのか物語の「終り」が気になるために最後まで集中してみれました。恋愛パートが少々雑かったかなぁと思いますけど。

クライマックスは教授に言わせれば「叙情的で最高のラスト」であるらしいが、うまく設定を活かしてきましたね。ずるいといいますか、巧いといいますか‥‥とりあえず私は作品全体を通して満足出来ましたよ。