rage30

ペパーミント・キャンディーのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

自殺した男の半生を描いた作品。

冒頭に描かれるのは、楽しくピクニックに興じるグループと、自暴自棄な振る舞いを見せるスーツ姿の男。
しばらくすると、スーツ男は線路に立って、電車に轢かれてしまう…。

あまりに唐突かつ意味不明な展開に「なんだこりゃ?」と戸惑っていると、次にスーツ男の過去が描かれていく。
計20年に及ぶ、彼の人生を回想していく事で、この男がどうして自殺するまでに至ったのかが分かっていくのである。

本作がユニークなのは、過去から現在へと一気に回想するのではなく、過去を7つのエピソードに分け、現在から過去へと回想していく構成だろう。
少しづつ過去を回想する事で、主人公の素性が徐々に明らかになっていくのだが、同時に新たな謎も登場していく。
それを何回も繰り返す事で、観客は主人公の人となりを理解しつつ、絶えずミステリーを解く刺激も味わえるのである。

最終的に、主人公の人生を狂わせた最もコアな事件は、彼自身の誤射による殺人だった事が明らかにされる。
序盤で「俺の人生をぶち壊した人間は多すぎる」と言っていたが、彼の人生を壊したのは彼自身だったのだ。
この言い回しから考えるに、おそらく彼は自分が犯した罪と向き合えず、他人のせいにして生きて来たのだろう。
だからこそ、人生のターニングポイントで尽く過ちを犯し続け、もう戻れない場所…人生の行き止まりにまで至ってしまったのかもしれない。

ラスト、これが主人公の走馬灯である事を暗示する終え方も面白いし、最初と最後が円環構造になっているもの上手い。
20年もの人生を一人で演じきったソル・ギョングも凄まじく、光州事件など韓国の歴史を紐付けたストーリーテリングも評価された一因なのだろう。
イ・チャンドンの出世作にして代表作、期待通りの作品だった。
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