柏エシディシ

ペパーミント・キャンディーの柏エシディシのレビュー・感想・評価

4.0
イ・チャンドン・レトロスペクティブにて4Kバージョンを。
名匠イ・チャンドンの国際的評価を決定づけた傑作。
実はこの映画、フォレスト・ガンプにちょっと似ている、と思っている。
場違いなスーツ姿の男の一代記。
しかし、ここで語られる物語は甘いチョコレートの様な話では無く、ペパーミントキャンディの様な寂寥感を引き摺る不思議な味わいを観た後に残す。
何をしでかすか判らない不快な男。
この男はなぜ、この様な人間になってしまったのか。
その時間を遡り、やがて明るみになるその顛末に、気付けば胸締め付けられ、否が応にも、戻らない時の残酷さを、観る人それぞれの人生を振り替えさせられてしまう。
以前は気づけなかったが、本作、近年韓国映画の題材として取り上げられることの多くなった光州事件をいち早く取り上げており、この映画が韓国映画のその後の躍進の先鞭をつけた一本である事を改めて証明している。
それどころか、時間を遡る構成を象徴する逆回しに滑走する列車が、映画史の伝統への目配せの様で、まさにドキュメンタリー「アイロニーの芸術」で言及しており我意を得たり。
冒頭と終幕で円環を成す構造、まさに映画が終わった瞬間に映画が本当に始まる様に感じさせる。
ぃやぁ、凄い。傑作だ。
柏エシディシ

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