ハレルヤ

天と地のハレルヤのレビュー・感想・評価

天と地(1993年製作の映画)
3.8
ベトナム戦争の悲劇を現地で生まれ育った女性レ・リーの半生を通じて描いた実話ドラマ。オリヴァー・ストーン監督が手掛けたベトナム戦争三部作の最終作。

現地で戦うアメリカ人の兵士の姿を描いた「プラトーン」。戦地での過酷な戦いで心身ともに深い傷を負った帰還兵の若者の姿を描いた「7月4日に生まれて」。そして本作はベトナムでごく普通の家庭で過ごしていた一般人の女性の目線からベトナム戦争を捉えています。

美しい自然の中で生き生きと過ごすレ・リー。その静かな日々は国同士の争いによって切り裂かれ、一気に生きるか死ぬかの毎日へと変貌。そこからはまさに波瀾万丈。

戦闘により離ればなれになった家族。スパイと疑われて拷問されたり、貧困に苦しみ売春をするまでになる。でも知り合った米軍将校スティーブとの出会いと結婚で、アメリカに渡り、ようやく恵まれた生活を手に入れる。

人生は好転したと思っても今度は戦争体験によりスティーブがPTSDを患った事で、夫婦間に溝が生じる。そこから先はご覧になって確かめていただきたいですが、これだけでも壮絶なほどの人生。

戦争によってどれだけ人生を狂わされたのか。しかも実話。今のウクライナや他の紛争地域でも同様の事が起きているかもしれないと思うと本当に胸が痛みます。争いで一番被害に遭うのは一般人。それを端的に表した作品でした。

悲痛な人生を送ったレ・リーを演じたヘップ・ティー・リーの演技は終始冴えていましたし、スティーブ役には名優トミー・リー・ジョーンズ。出番は映画開始してから半分経過してからだし、出演シーンも映画全体から見ると少なめ。それでもあの堂々たる存在感。優しさのある姿からPTSDで心を制御出来なくなっていく姿の差は彼の実力を改めて感じるものでした。

戦闘シーンはほぼ無く、戦争で運命を左右された女性の人生を捉えたドラマ。オリヴァー・ストーン監督のベトナム戦争三部作の中では一番目立たない作品ですが、前二作に負けない芯の強さがあると思います。
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